2018年の世界10大リスク(ユーラシア・グループ)


ユーラシア・グループによる2018世界10大リスクが公開されていました。ポイントを抜粋し、和訳にして投稿します。

ユーラシア・グループの世界10大リスクとは?

ユーラシア・グループは、地政学的リスク分析を専門とするコンサルティング会社です。世界10大リスクは、ユーラシア・グループが毎年1月に公開しているトピックスで、投資家(特に為替投資家)にとってはお正月の風物詩となっています。

世界10大リスクを読めば、注意すべき世界の動向を知る事ができます。2018年の世界10大リスクは下記の通り報告されました。なお、2017年は世界10大リスクの日本語版が公開されていましたが、2018年の日本語版は作成されなかった様子です。

TOP RISKS 2018(eurasia group)

ちなみに、世界10大リスクは毎年鋭い視点で予想がされています。2017年の世界10大リスクについてまとめた記事を、参考までに下記に貼っておきます。

世界10大リスク

真空を愛する中国(China loves a vacuum)

Trump has renounced the US commitment to Washington-led multilateralism and generated much uncertainty about the future US role in Asia, creating a power vacuum that China can now begin to fill.

トランプ大統領はワシントン主導の多国間主義(1つの課題に多国が取り組む事)を放棄し、アジアにおけるアメリカ合衆国の役割についての不確実性を生み出した。それは真空の力を生み出し、中国がこの真空を満たそうとしている。

トランプ大統領により、米国は内向きを志向するようになりました。そこに隙間ができ、中国の動向に注視が必要になりました。貿易・投資や技術についても、中国の存在感は増すばかりです。

アクシデント(Accidents)

There’s been no major geopolitical crisis since 9/11, and none created by governments since the Cuban Missile Crisis. But it’s impossible to ignore the risk of such a crisis today, because there are too many places where a misstep or misjudgment could provoke serious international conflict.

911以来主な地政学的危機は無く、政府によって作られた危機はキューバのミサイル危機以来無い。だが、今日ではこのような危機のリスクを無視することは不可能だ。なぜなら、誤った判断により深刻な国家間衝突を誘発しうる場所があまりに多いからだ。

シリアは引き続き内戦が続いていますし、北朝鮮のミサイル実験と核開発は止まりません。加えてサイバー攻撃もリスクです。

世界的な技術冷戦(Global tech cold war)

The pace of exciting technological breakthroughs is quickening. In recent years, the communications revolution empowered individuals by giving them unprecedented access to information and by
boosting cross-border collaboration.

エキサイティングな技術革新のペースは早くなっている。近年ではコミュニケーションの革命が、未曾有の情報アクセスと国境を超えた協力の後押しを通して、個人に力を与えた。

特に米国と中国による技術の冷戦が進んでいます。

メキシコ(Mexico)

Mexico will have a tough year. Indeed, 2018 will be a defining moment for the country’s longer-term outlook, which will depend on the outcome of NAFTA renegotiation and the country’s 1 July
presidential election. Both carry significant market risks.

メキシコは厳しい一年を過ごすだろう。2018年は、NAFTAの再交渉の結果と7月1日の大統領選挙の成果に依存する、同国の長期的見通しの決定的な瞬間になるだろう。どちらも重要な市場リスクを伴う。

メキシコが投資家の間で話題になる事は、今まではあまり多くはありませんでした。ところが今年は重要な分岐点に相当しますので、市場リスクとしてメキシコの注視が必要そうです。

米国とイランとの関係(US-Iran relations)

US-Iran relations will be a source of broad geopolitical and market risk. The nuclear deal, known as the Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA), will probably survive 2018, but there’s a substantial chance that it won’t, pushing the region into a period of real crisis.

米国とイランとの関係が、広い地政学的リスクと市場リスクの源となるだろう。包括的共同作業計画(JCPOA)として知られている核問題に関する合意文書は、おそらく2018年も生き残るだろうが、生き残らない可能性も高く、本当の危機に陥る可能性は十分にある。

イランの核問題へは引き続き注視が必要です。

機関の衰え(The erosion of institutions)

Avoid reform of political institutions, and even the strongest of them will weaken over time.

Across the developed world (with the notable exception of Japan), popular trust in technocratic/bureaucratic institutions has declined steeply, in some instances as a result of direct political interference in their work.

政治機関の改革を避け、最強の機関でさえも時間の経過とともに弱体化するだろう。

(日本を除いた)世界では、技術的/官僚的機関に対する一般的な信頼は、仕事の直接的な政治的干渉の結果として急激に減少した。

機関の衰えについての指摘です。議会選挙の投票率はヨーロッパで下落傾向ですし、メディアは嘘ニュースを拡散しているかも知れません。信じられる機関が少なくなれば、世界は無秩序へ向かうでしょうから心配です。

保護主義2.0(Protectionism 2.0)

Thanks to populist pressure, the spread of state capitalism, and the ongoing geopolitical recession, protectionism is making a comeback.

民衆主義の圧力、国家資本主義の広がり、そして進行中の地政学的な景気後退のおかげで、保護主義は復活している。

昨今の保護主義の復活により、自由な貿易ができなくなりつつあるかも知れません。

英国(United Kingdom)

The country’s troubles will come from both acrimonious Brexit negotiations and difficult domestic politics.

国の悩みは、激しいBrexit交渉と困難な国内政治の両方から来るだろう。

2016/6/23(木)に実施された英国の国民投票により、英国のEU離脱Brexit)が決まりました。それ以来、ポンド安とインフレを始めとした、英国の受難が続いています。2018年も引き続き、英国にとって難しい環境になりそうです。

東南アジアのアイデンティティ政治(Identity politics in southern Asia)

Identity politics in Europe and the US has taken center stage in recent years, and we’ll see more evidence of a similar phenomenon in Southeast Asia and on the Indian sub-continent in 2018. This trend threatens the future of these increasingly prosperous regions, creating unexpected challenges for economic planners and foreign investors.

近年、ヨーロッパと米国のアイデンティティ政治が中心的だったが、2018年には東南アジアやインド半島でも同様の現象が発生するという証拠が増えている。この傾向はますます繁栄している地域の未来を脅かすものであり、経済プランナーや外国人投資家に予期せぬ挑戦を引き起こす。

米英の内向き志向・保護主義が世界各国に波及する可能性があります。

アフリカの治安(Africa’s security)

The “Africa Rising” narrative remains appealing, but this year will face a new challenge. The continent’s core countries (Cote d’Ivoire, Nigeria, Kenya, and Ethiopia, among others) have recently demonstrated robust investment climates, and they’ve been generally sealed off from the troubles of the “periphery” (Mali, South Sudan, Somalia, etc.). But in 2018, negative spillover from Africa’s unstable periphery will increasingly spoil the continent’s success stories.

「アフリカの新興」物語は引き続き魅力的だが、今年は新たな課題に直面する。大陸の主要国(コートジボワール、ナイジェリア、ケニア、エチオピアなど)は、最近、堅調な投資気候を示しており、一般に「周辺」の問題(マリ、南スーダン、ソマリア、など)から封鎖されている。しかし、2018年には、アフリカの不安定な周辺地域からのマイナススピルオーバーが、大陸の成功事例をますます奪うだろう。

アフリカの国々は投資家にとって魅力的ですが、アフリカは陸続きで各国は繋がっています。治安悪化は隣国に順に波及する可能性がありますので、注視が必要です。

無リスク資産への投資


無リスク資産の活用は、資産運用の柔軟性と効率を向上させます。

無リスク資産は、将来的にリスク資産の購入に利用する事でポートフォリオ全体の成長性を高めます。無リスク資産を含めた資産全体の成長こそが、投資家にとって最も興味のある指標です。特に長期運用において、無リスク資産を活用しリスク資産のリスクの大小をコントロールする事は重要です。

無リスク資産とは?

無リスク資産(Risk-free Asset)は、元本が保証された安全資産を意味します。

収益が確定的な資産は、リスクが無いために「無リスク資産」と呼ばれます。通常無リスク資産は預貯金を指しますが、個人向け国債を事実上の無リスク資産と考える事もできます。

無リスク資産の対義語はリスク資産です。リスク資産の収益は不確定で、収益分布の広がり具合を表す指標であるリスク(標準偏差)が計算されます。

無リスク資産への投資

無リスク資産の利用は、有利な資産運用に繋がります。

無リスク資産を利用した、効率的フロンティアの拡張

無リスク資産は、有利なリスク・リターンの組み合わせを手に入れる際に活躍します。

例えばポートフォリオのリスク・リターンの組み合わせを考えます。もしもリスク資産のみでポートフォリオを構成するならば、望ましいリスク・リターンの組み合わせ(リスクが同じならばリターンが大きい、または、リターンが同じならばリスクが小さい)は、リスク・リターンダイアグラム上で曲線を描きます。この曲線は効率的フロンティア曲線と呼ばれます。

ところが、無リスク資産を組み合わせれば、この効率的フロンティアは拡張され、直線になります。下図はその様子です。無リスク資産のリスク・リターン(点 r_{f})から効率的フロンティア曲線へ引いた接線が、拡張された効率的フロンティアです。ここで r_{f} は、無リスク資産(Risk Free Asset)の金利を指しています。

この拡張された効率的フロンティアの直線は、資本市場線(Capital Market Line, CML)とも呼ばれています。

画像出典:ファンド定理(リンク切れ)

このように、無リスク資産の利用は、より有利なリスク・リターンの組み合わせを手に入れるために大変有用です。投資家が興味を持つべきは、資本市場線です。

投資元本確保による、高い成長性の享受

無リスク資産への投資はポートフォリオの成長性を高めます。

とは言え、成長の程度はパラメータに依存します。例えば今、リスク資産のリターンは、平均4%、標準偏差は22%、無リスク資産の金利は1%であったとして考えます。

下図は、この環境下での、リスク資産への投資比率別の期待成長率です。横軸がリスク資産への投資比率、縦軸が期待できる資産の成長率です。

リスク資産の組み入れ比率が高くなり、70%を超えてきたあたりから、ポートフォリオの成長性が悪くなる様子が見て取れます。リスク資産を持ちすぎた場合、それが大きく下落した場合に投資元本を失います。元本が小さくなった場合、その分それ以降の上昇相場の恩恵を享受できなくなります。このような過程から、リスク資産を大きく持つ資産運用は、資産の成長性が低くなります。

一方で、もしも無リスク資産を一定の比率で保有していた場合、それを投資元本として活用する事で投資家は再起が可能です。更にこの再起では、リスク資産が値下がりした局面で買い付けができる(安く買える)ため、成長性が高まります。

なお、無リスク資産とリスク資産との資産の移動は、リバランス(rebalance)や、ボラティリティの出し入れ(pumping)と呼ばれる投資テクニックとして知られています。

リスクを取り過ぎた運用を避けるために

リスクを取り過ぎた運用を避けるために、無リスク資産の活用が大切です。

リスクを取り過ぎた運用の弊害は、下記の通り、いくつかの記事で既に紹介しました。無リスク資産への投資によって、リスク資産のリスクの大小をコントロールできます。特に長期運用において、リスクのコントロールは重要です。

リスク資産への長期投資で必ず負ける場合とは?


プラスリターンの金融商品を長期運用すれば、長い目で見たら儲かりそうだと考えてしまう投資家は多くいます。ところが現実では、必ずしも儲かりません。特にリスクを取り過ぎた資産運用を長期間継続すれば、儲かるどころか必ず負ける事になってしまいます。

シミュレーション

ハイリスク・ハイリターンな金融商品

例えば四半期の平均リターン3%・リスク30%の金融商品を考えます。

この金融商品の年間でのリターン期待値は12%になります。ハイリスク・ハイリターンな金融商品に分類されます。過去記事リスクの取り過ぎは投資成果にどのように影響するか? レバレッジ運用はほどほどに?では、赤線で表現した金融商品に相当します。

金融商品の経時変化

下図は、その金融商品でのリターンの確率分布が、時間とともにどのように変化するかを示した乱数シミュレーションです。

動画中のave.は平均リターン、maxは最も運が良い投資家のリターンです。loserは、このリスク・リターンで運用する投資家が確率的に、10,000人中の何人が元本割れとなるかを示す数値です。

平均リターンは上がり、敗者は増える

この金融商品は、期中リターンがプラス(平均リターン3%)ですので、平均するとリターンは増えていきます。運が良いと大きく資産を増やす事ができ、最後には72倍とした投資家が現れます。

一方で敗者の数も時間とともに増加する傾向にあります。実はこの金融商品は、平均するとプラスリターンにもかかわらず、リスクが大きいために、長期投資をすれば必ず負ける(元本割れする)と言えます。(ε-δ論法で時間を長くとれば勝率をどこまでも小さくできます。)

なお、この金融商品の期待成長率を、ツールリスク資産の最適保有比率計算v2.0.xlsmを用いて数値計算したところ-1.8%とマイナス値が出てきました。

リスク過多の結果と対策

リスク過多の長期投資は必ず負ける

リスク過多の状態で長期投資を行うと、必ず負けます。

確かに良い投資(適切な運用)を行えば時間を味方にできるのですが、逆に悪い投資(不適切な運用)を行う際は時間は投資家の敵となるわけです。世間では「長期投資は良い事だ」という風潮がありますが、長期投資の良し悪しは運用手法抜きには語れません。

時間を味方にできるように、リスクを抑え、着実に成長できような手堅い資産運用を心がけたいものです。

リスクを減らす無リスク資産

リスクを減らした運用を行うためには、ポートフォリオに無リスク資産を組み入れる事が有効です。

無リスク資産の組み入れにより、ポートフォリオは安定化します。仮に恐慌が訪れてリスク資産が大きく減ったとしても、投資家は無リスク資産を投資元本として再起・復活が可能になります。

シミュレーションのソースコード

乱数は前回同様でROOTのgRandom->Gaus関数を利用し、PAWでプロットしました。

リスクの取り過ぎは投資成果にどのように影響するか? レバレッジ運用はほどほどに?


極端なレバレッジ運用等に起因するリスクの取り過ぎは、投資の勝率を引き下げる事で、投資成果に悪影響します。その様子を乱数シミュレーションで示しました。紹介します。

レバレッジ運用

少ない資本金で大きな取引をする事をレバレッジ運用と呼びます。

例えば四半期でリターン1%・リスク10%の金融商品があったとします。この金融商品を使った運用では理論上、2倍のレバレッジをかけると、リターン2%・リスク20%となり、3倍のレバレッジではリターン3%・リスク30%が実現します。

このようにレバレッジはリターンの期待値を引き上げます。一見すると素晴らしい仕組みです。ところがレバレッジをかけた運用は、リスクが大きくなった事で勝率が下がり、投資成果が期待できなくなります。

シミュレーション

下図は乱数シミュレーションです。リスク・リターン別に、リスク資産のリターン分布がどのように経時変化するかをプロットしました。

青:リターン1%(年利4%) リスク10%
緑:リターン2%(年利8%) リスク20%
赤:リターン3%(年利12%) リスク30%

横軸はリターン(倍)です。tは経った時間を示します。

高リスク運用で平均リターンは確かに上がる

プラスリターンの金融商品にレバレッジをかけ、高リスク運用すると、確かに平均リターンは大きくなります。シミュレーションでも平均値(Mean)は上がっています。

時間が経った箇所ではヒストグラムに収まらなくなってしまい正しい平均値が出ていませんが、実際には高いリスクは高い平均リターンを生み出します。この現象は、高リスク投資では大勝ちした少数の投資家が、全投資家のリターンの平均値を上方に牽引するために起こります。

高リスク運用では負けやすくなる

高リスクで資産運用を続けると、負けやすくなります。シミュレーションでも、最もリスクの高い赤線のグループが最も敗者が多く、緑、青はこの順に極端な敗者が少なくなっています。

高リスク投資では負けている投資家は負け続け、死屍累々となります。あっという間に負けます。そして一度負けた投資家が平均値へ復活する確率は極めて小さく、負ける投資家は増え続けます。

高リスク投資で大勝ちした少数の投資家の背後には、多数の負組投資家がいるのです。シミュレーションにおいて、年利12%に惹かれた赤組投資家の多くが、元本を半分以下に減らす様子は目に焼き付けておいて損はありません。

無難な運用をしたいのであれば、レバレッジをかけず、リスクを抑えた運用を行うのが良いでしょう。

まとめ

レバレッジ運用等による高リスクな運用を行えば、リターンの期待値が上がります。ところがそれは、一部の大勝投資家が期待値を引き上げただけであり、多くの投資家は負けて元本を失います。このようにリスクの取り過ぎは、投資の勝率を引き下げる事で、投資成果に悪影響します。無難な運用をしたいのであれば、レバレッジをかけず、リスクを抑えた資産運用を行うのが良いでしょう。

シミュレーションのソースコード

私個人の覚書を兼ね、コードを掲載しておきます。ROOTのgRandom->Gaus関数で乱数を生成し、coutで各人の資産推移を取得(ファイル名aaa.txtは1倍 bbb.txtが2倍 ccc.txtが3倍レバレッジ)、PAWマクロでプロットしました。

長期投資でリスクは減らない リスクはどう経時変化するか?何故「リスクが減る」という主張に騙されるのか?


長期投資でリスクが低減するという金融商品のセールストークがありますが、それは誤りです。運用期間が長くなるにしたがって、リスクは増える性質があります。

リスクがどのように増えるのかを、乱数シミュレーションによる動画を用いて説明します。

リスクとは?

資産運用の用語としてのリスクは、値動きの大きさを意味します。

例えばハイリスクな金融商品とは、大きく値上がりする可能性がある反面、大きく下落する可能性もある金融商品を指します。リスクは必ずしも価格下落の可能性を示す単語ではなく、値動きの大きさを示す指標として利用されます。

リスクはリターン分布の標準偏差で定量的に評価されます。多くの場合、リターン分布は過去の実績から取得します。そして今後もそのような値動きをするだろうと仮定し、将来の値動きの大きさの程度を推定する事になります。

リスク資産の長期保有シミュレーション

金融商品のパラメータ

シミュレーションでは、年間のリスクが20%、平均リターンが4%の金融商品を考えます。このリスク・リターンは、比較的強気な投資家が日本株の値動き特性として期待する値です。

この年間リスク・リターンは、四半期ではリスクは10%程度、リターンは1%程度に相当します。四半期ごとに値動きを観測し、4年間経過するまでのリターン分布を作成しました。

リターン分布の経時変化

動画は2種類です。上図は縦軸一定にした分布の広がり方を確認するため、下図は縦軸を調整しながら分布そのものの様子の詳細を確認するための資料です。横軸はリターンです。

最初の四半期でリターン分布は10%程度の広がりを持ち、時間の経過とともにリターン分布が拡大する様子を確認できます。下図右上のパラメータのmeanはリターンの平均値、RMSはroot mean squareの略で確率変数を二乗した値の平均値の平方根です。このRMSを資産運用におけるリスク値と考えて構いません。

リスクは増え続ける

シミュレーションから明らかなように、時間が経つにしたがってリターン分布は広がり続けます。RMSの値も一方的に大きくなります。長期投資では、リスクは拡大するのです。

時間が経つにつれ、相場が良い時は、増えた資産を元手にもっと多くの利益が出ます。逆に下落相場では資産が毀損し、将来の上昇相場のリターンの元手を失う事で損失が拡大します。このようなメカニズムで、リターン分布は時間とともに広がり続け、リスクは増大し続けます。長期投資でリスクが減る事はありません。

平均リターンがたとえプラスでも、多くの投資家は儲けられない

シミュレーションは、金融商品の平均リターンがプラスといえど、多くの投資家が損をする事がある事を示しています。時間推移を見れば、Mean(平均)の値は確かに増え続けています。にもかからず、(4倍以上に資産を増やす可能性がある一方で、)資産を減らすパターンが多く散見されます。

長期的なリターンは、リターンの平均値に近づくという主張がありますが、これは誤りです。負けている投資家は負け続けます。多くの投資家は負けて元本を失い、平均値に戻れなくなくなります。この性質は逆正弦定理という名前で広く知られています。

「長期投資でリスクが減る」という主張は何が間違っているか

ここまで読めば、長期投資でリスクが減らない事は明らかでしょう。では世間一般の「長期投資でリスクが減る」という主張は何が誤りなのでしょうか。

多くの場合、それらの誤った主張は「1年あたりのリスク」を提示します。「1年あたりのリスク」は「リスク」とは異なる概念です。そして長期投資家の興味は、長期運用におけるリスクであり、リターンである事を考慮すれば、「1年あたりのリスク」は役立たない、無意味な指標です。にもかかわらず、結論部分の「長期投資で報われる」という甘言は魅力的ですので、長期投資でリスクが減るという考えは誤りにもかかわらず、広く支持されています。

シミュレーションのソースコード

私個人の覚書を兼ね、コードを掲載しておきます。ROOTのgRandom->Gaus関数で乱数生成し、coutで取得、PAWマクロでプロットしました。

2017年の世界10大リスク(ユーラシア・グループ)


ユーラシア・グループによる2017世界10大リスクが公開されていました。

2017世界10大リスク(ユーラシア・グループ)

このレポートは24ページにわたるpdfで少し長いですが、抜粋と所見が楽天証券のレポート(ハッサクのなるほど為替超入門)に掲載されていました。楽天証券のレポートは「2016世界10大リスク」との比較を踏まえ、動向の変化にも言及する分析です。

画像:第133回 2017年の世界10大リスク(ハッサクのなるほど為替超入門)

今年も昨年に引き続き、「米国」「欧州」「中国」の政治リスクからは目が離せません。

2リスク資産ポートフォリオの特性に学ぶ、資産選択で重要な事柄


2種類のリスク資産と無リスク資産があれば、それぞれの保有比率を調整する事で、投資家はさまざまなリスク・リターンのポートフォリオを構築できるようになります。

投資家は最も有利なポートフォリオを利用したいと考えますが、「値動きの相関係数」「無リスク資産の金利」「リスク」「リターン」等のパラメーターの状況や変化によって、資産の最適な組み入れ比率は変化するものです。

この記事では、2リスク資産ポートフォリオに限定して、パラメーターの変化が最適なポートフォリオにどう影響するかを論じます。その上で、更に一般的な資産運用で重視すべき事柄についてポイントをまとめます。

2リスク資産ポートフォリオの特性

2リスク資産ポートフォリオは、2つのリスク資産で構成されるポートフォリオです。各資産の組み入れ比率によって、ポートフォリオのリスク・リターンの値は変化します。

最適な組み入れ比率は、リスクの割にリターンが大きくなる比率です。それは、シャープレシオが最大となる点と言い換える事ができます。最適な比率を考えるためには、各パラメータの変化が最適比率にどう影響するかを知っておく事が不可欠です。

以下に、各種パラメータが変化した場合に、最適比率がどう変わるかを動画でまとめました。

相関係数が変化した時

リスク資産同士の相関係数は、最適な保有比率に大きく影響します。

下図はA資産(リスク20%,リターン5%)とB資産(リスク10%,リターン1%)の相関係数が変化した際の、最適な保有比率の変化を図示しています。

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図の確認方法

青の曲線は、2リスク資産のみを保有し、保有比率を変化させた時に実現できるリスク・リターンの組み合わせです。赤の直線は、2リスク資産と無リスク資産を利用して実現可能な最も有利なリスク・リターンの組み合わせで、資本市場線と呼ばれる直線です。

相関係数の変化による最適資産配分の変化

相関係数が大きい(1に近い)時は、低リスク・高リターンな方の金融商品を多く持つべきです。上図では相関係数が0.3までは、A資産だけを持つ(A資産100%保有)が最適でした。

一方で相関係数が小さくなる(-1に近くなる)にしたがって、B資産を組み入れた方が良いように変わってきます。資産同士の値動きの相関が小さい時や、逆相関の関係がある時は、不利な金融商品(高リスク・低リターンな金融商品)を多少組み入れた方が有利に運用できます。リスク分散の効果が大きくなるからです。

逆相関資産の組み入れが重要

2リスク資産の場合に限らず、一般的なポートフォリオ構築においても、他の資産との相関が低い金融商品を組み入れる事で、投資家は有利なリスク・リターンの組み合わせを手に入れられます。多くの資産の値動きと逆相関がある資産を組み入れれば、リバランスを通して運用資産の成長に貢献します。

無リスク資産の金利が変化した時

無リスク資産の金利も、最適な保有比率に影響します。

下図は、無リスク資産の金利を-1.5%から3.0%まで変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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金利上昇で高リスク資産選好

金利が上昇するに従って、高リスク・高リターンであるA資産の組み入れ比率が増える事が分かります。

金利変化への対応

一般的な金利上昇局面でも、投資マネーはリスクを取ってでも高リターンな金融商品に向かいます。一方で低リターンな金融商品は、金利上昇局面では売られやすくなります。

逆に金利下落局面では、低リターンな金融商品の組入れで有利な運用できるようになります。そのため、場合によってはマイナス金利の中でさえ、債券が更に買われる事があります。

リスクが変化した時

リスクの変化は、保有比率に影響します。

下図は、A資産のリスクを変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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リスク大→最適組み入れ比率が小さく

A資産のリスクが大きくなるにしたがって、A資産の最適保有比率は小さくなります。リスクを避けたほうが有利な運用ができるからです。

リスクの大小と最適組み入れ比率

一般的なポートフォリオ構築においても、(他の条件が同じであれば)リスクが大きな金融商品は少なめに、リスクが小さな金融商品は多めに持つのが望ましい選択です。

リターンが変化した時

リターンの変化は、保有比率に影響します。

下図は、A資産のリターンを変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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リターン大→最適組み入れ比率が大きく

A資産のリターンが大きくなるにしたがって、A資産の最適保有比率は大きくなります。

リターンの大きな資産を多く保有する事

一般的なポートフォリオ構築においても、リターンが大きな金融商品を多く持つ事は大切です。

まとめ

2リスク資産ポートフォリオの特性から、一般的なポートフォリオ構築において大切な事柄が分かりました。

ポートフォリオ構築の際は、「他の資産との相関が低い資産を組み入れる」「金利の変化に対応する」「リスクの小さな金融商品を多く組み入れる」「リターンの大きな金融商品を多く組み入れる」という事が大切です。

実際にはこの4つのポイントは、矛盾して同時には成立できないかも知れません。現実的にはこれらのバランスを取りながら運用していく事になります。