人工知能(AI)による株価分析でうまく儲けられない理由

人工知能(AI)による株価分析を行い、株式市場で大儲けをしようと野心的な試みをしましたが、いくつかの問題が発生し、結果として上手くいきませんでした。人工知能(AI)でうまく儲けられない理由をまとめておきます。

はじめに:試みた分析

私が試みた株価分析は、株価の過去データを人工知能(AI)に学習させて、翌日以降の株価水準を機械に予測させる方法です。流行りのディープラーニングとしてMLP(Multi Layer Perceptron)も試しましたが、結局素人でも使いやすく精度が高いランダムフォレストと呼ばれる機械学習のアルゴリズムを中心に分析を行いました。

儲けられない理由

株価データ数の制約の問題

私は機械学習では、多様なパラメータ(前日の高値、安値、終値、2日前・3日前の株価情報、出来高、移動平均線の水準・・・etc.)、を機械に与えてあげれば精度の良い株価予想を返してくれると考えていましたが、そうではありませんでした。

与えるパラメータを増やせば、モデルが複雑になり過剰適合(overfitting)を起こし、汎用性の高い株価予想ができなくなります。勿論分析対象となる株価データを増やせばこの問題は解決しますが、株価データは市場が開いているのが1年間で243日前後の関係で、過去の年の株価データを集めたとしてもそれほど多くの蓄積はありません。株価データは意外に少ないのです。このようにデータを増やせない以上、徒にパラメータは増やせません。

ただし、工夫すれば多くのパラメータを使った分析も可能な様子でした。例えばMLPを使えば余計な情報を捨てられますし、主成分分析(PCA)と呼ばれる手法でパラメータを回転させて使う手法もありました。

誤検出の問題

機械学習では、何もない所から誤って何かが検出されてしまう事があります。例えば乱数で生成したチャートを分析しても、あるはずの無い上昇または下落シグナルが出てしまう事があるのです。

勿論、手持ちのデータをモデル構築に用いる「訓練セット」と、モデルの評価に使う「テストセット」に分割し、未知のデータでモデルが機能するかどうかを検証しました。にもかかわらず、不幸にも訓練セットとテストセットの両方で有効となってしまったチャートパターンがあり、誤検出が発生しました。

株価の予測とリターンの違い

「株価を予測できるかどうか」と、「株で利益を得られるかどうか」が、(意外な事に)別問題である点も、機械学習で儲ける事を困難にします。

例えば、7割で株価を当てられるモデルがあったとします。何の情報も無ければ当たるのは5割ですので、7割は良く予想できています。ところが、このモデルで儲けられるかというとそうではありません。なぜなら買う時に上手くいく確率が70%で、売る時に上手くいく確率が70%なら、この売買で儲かる確率は49%でしかないからです。これでは丁半博打と変わりません。このように、株価をある程度高い精度で予測できたとしても、うまく儲けられない事があります。

機械学習で儲ける事はなかなか困難です。

資産運用の出口戦略

資産運用は資産形成期、保守期、取り崩し期と推移しますが、この内、取り崩しに関する運用戦略が出口戦略です。アセット・アロケーションに関する手法として代表的な出口戦略には、債券シフト法と分散投資があります。売却手法としての出口戦略戦略には、定額売却と定率売却があります。この記事ではそれぞれ紹介します。

出口戦略とは?

資産運用の出口戦略

人生の中での資産運用は、現在から死ぬまでの期間が計画期間(プラニングホライズン)となります。運用は、資産形成期、保守期、取り崩し期と推移しますが、この内、取り崩しに関する運用戦略が出口戦略です。資産運用の完結には出口戦略が不可欠です。

出口戦略は重要であるにもかかわらず、情報は不足しています。なぜなら世の中の多くの組織は買い煽りはしますが、出口戦略を語りたがりません。例えば証券会社は投資信託等の資産を投資家に保有させる事で利益を得ますので、資産売却の手法を紹介すると利益が減るため、投資家に敢えて売却の手法を紹介する事は稀でしょう。個人投資家は、自分で出口戦略についての情報を集める必要があります。

参考:一般的な出口戦略

一般的に出口戦略(でぐちせんりゃく、exit strategy)は、軍事的もしくは経済的な損害が続く状況から損失・被害を最小限にして撤退する戦略を指します。ベトナム戦争時にアメリカ国防総省内で使用されたのが始まりとされています。

出口戦略(Wikipedia)

※この記事では、前者の「資産運用の出口戦略」を扱います。

債券シフト法 .VS. 分散投資

資産運用の出口では、資産配分を変更する、具体的には国内債券の保有比率を上げる(債券シフトする)べきだという考えと、債券への集中投資は避けて分散投資をするべきという2つの考えがあります。一般的には債券シフト法が主流となっていますが、私個人的に日本人の投資家は、年齢にかかわらず分散投資を行う方が良いと考えています。

債券シフト法

債券シフト法は、年齢と共にポートフォリオの債券比率を増やすという手法です。債券シフト法の主流は「債券の比率を年齢と同じにする」という進め方です。例えば30歳であれば債券比率が30%で、残りの70%が株式です。60歳であれば債券60%、株式40%です。なお、ここでの債券は、国内債券を意味しています。(外国の債券・外貨建て債券ではありません。)

ウォール街のランダム・ウォーカーを始めとする米国の古典的投資教本では、年齢と共に債券比率を高めるという手法が紹介されています。このように有名な手法ですので、多くの投資家が実践していると予想されます。

なお債券シフト法は、資産運用の出口で安全資産とされる債券に資産を移すことで株価暴落による資産毀損リスクを低減します。逆に言えば、国債が安全と言い切れない国では、債券への集中投資はリスクが増えるため、債券シフト法はやや使い勝手が悪い手法になります。また、資産運用の出口が長い(長寿の)国では、リスク資産による成長余地が少なくなるため、債券シフト法のメリットが薄れます。

分散投資

分散投資は、「卵は1つのカゴに盛るな」という投資格言のもと、多くの資産に分散して投資する事で、1つの資産の値下がりの悪影響を最低限にとどめようとする手法です。

債券シフト法を実践する場合、国内債券への集中投資は避けられません。古典的投資教本が想定する20世紀の米国人は、それ(米国債への集中投資)で良かったのでしょうが、21世紀の日本人にはあまり勧められるものではありません。日本の債券は決して安全ではなく、集中投資の対象にはなり得ないからです。

広く知られている通り、日本の政府債務の膨張は深刻で、残高は対GDP比で232.4%(2016年)に達しています。財務省の国際比較でも、突出して高い値となっています。ただし日本国債は日本銀行を筆頭に国内でほぼ安定して保有されており、対外債務の多かったギリシャのように簡単には破綻しません。このように破綻確率は低いものの、債務膨張は永遠に続けられずどこかで破綻します。そして対内債務型の財政破綻は深刻なインフレを招く事が知られています。財政破綻もしくはそれに近いようなインフレが起これば、国債価格は急落する事でしょう。

政府債務の膨張が進めばいつかは来る、このような状況下で個人投資家が資産の大部分を毀損しないためには、国内債券以外の資産への分散投資が不可欠です。国内債券の代わりになるべく多種多様な資産を保有する事で、1資産の価格下落の影響を最小限に抑えます。

定額売却 .VS. 定率売却

定額売却

一定額を売却する手法です。積立時には定口購入よりも有利とされるドル・コスト平均法の逆に相当し、不利な売却手法の1つです。とは言え売却額が一定であるため、安定したキャッシュフローが実現します。リスク資産を定額売却する場合、リスク資産の値動きによって資産が枯渇する時期が変動し、遠い将来のキャッシュフローが読めなくというデメリットもあります。

定額売却は決して有利な売却手法ではありませんが、売却の手法は充実しています。例えば毎月分配型投資信託を保有すれば、毎月ある程度一定額のキャッシュの受け取りが実現します。またSBI証券の投資信託定期売却サービスのような、定額売却サービスもあります。

定率売却

定率売却は、毎月一定比率の資産を売却する手法です。

定率売却では、リスク資産が高値圏にある時は多く売り、安値圏にある時の売却額は少な目になります。資産運用の理想「安く買って高く売る」を実現しやすい売却手法で、良い手法だと考えられます。ただし定額売却のようにツールが充実していません。また、リスク資産の値動きによって売却額が安定しないというデメリットがあります。

Q. 株で損する事はありますか?

先日株式投資について聞かれ、回答しました。聞かれた内容と、私の意見を問答集として投稿します。

Q. 株で損する事はありますか?

A. はい。株で損する事があります。

株は預貯金と違い、値段が上下します。そのため、株式投資では損をする可能性があります。

ただし株での損失額を小さくするためにいくつかの方法があります。保有額を少額にする、下がりにくい株を買う、下がりにくい買い方をする、などの方法が有効です。下がりにくい株とは、生活必需品等の需要が安定している分野の株です。下がりにくい買い方とは、多くの種類の株を持つ事で1銘柄の下落の影響を軽減する「分散投資」と呼ばれる手法が有名です。

Q. 最初はどれくらいの金額から始めれば良いですか?

A. 投資の最初は、5万円以内が良いでしょう。

リスク資産の値動きは、体感しなければ良く分からない事があります。最初は少額から始めるのが良いでしょう。退職金の大部分をいきなりリスク資産に投じて大失敗する人もいますが、そうならないように基本は少額から始めます。そして様子を見つつ、運用の知識をつけながら運用規模を増やしていくのが無難です。

株式の銘柄には、数千円から数万円の少額から買える株も多くあります。具体的な銘柄は、単元株価格下位ランキング等を利用できます。

単元株価格下位 Yahoo!ファイナンス

Q. 有名な所の株を買ったら良いですか?

A. 最初は勉強のために知っている銘柄・興味を持てる銘柄を持つのが良いでしょう。

ただし、有名企業の株は多くの人が購入するため割高になり、投資妙味が薄れている事が少なくありません。慣れてきたら知らない企業を研究し、良さそうであれば買うのが良いでしょう。

Q. 株を買うのは馬券を買うのと同じ感覚ですか?

A. いえ、金額や無価値になる確率が異なります。

馬券は100円から買えますが、株は少し高額で、最低でも数千円程度からの投資が必要です。ただしその一方で、競馬では負けると直ちに馬券が紙切れになりますが、株券は(値下がりはしますが)無価値になる事はあまり多くはありません。株式会社はそう頻繁には潰れないからです。

マルチファクターモデルに学ぶ「株価を説明する因子」 どうして株価は動くのか?

株価はどのようなモノから影響を受け、生成されるのでしょうか。株価を説明するマルチファクターモデルにて、利用されている因子を「外的ファクター」「抽出されたファクター」「企業の特性」の3種類に大別し、紹介します。

マルチファクターモデルとは?

マルチファクターモデルは、株式や債券等のリスク・リターンの形成要因を、複数のファクターにより表す統計的モデルです。

マルチファクターモデルとは、モダン・ポートフォリオ理論が全盛期だった一九七〇年代に、米国のバー・ローゼンバーグ氏らが研究の副産物として実用化した統計モデルだが、ポートフォリオのリスクを数十のファクター(銘柄の一般的な属性や業種など)で説明するソフトウェアだ。現在もバーラ(BARRA)モデルが運用業界のデファクト・スタンダードだが、バーラ・モデル以外のポートフォリオ分析ツールもある。但し、何れもプロ用で、データ代を含めて、毎月の使用料が数十万円単位になるのが難点だ。

マルチファクターモデルで何ができるか。たとえば、TOPIXをベンチマークとして運用している日本株のファンドマネジャーのポートフォリオが、TOPIXに対してどのような相対的なリスク(「推定トラッキングエラー」と呼ばれる)を持っているかを計算できる。

出典:第204回 ファンドマネジャーのトレーニング・プログラムを考える(山崎元「ホンネの投資教室」@楽天証券

マルチファクターモデルの株価説明因子

株価の説明に寄与する因子は、大別すると「外的ファクター」「抽出されたファクター」「企業の特性」の3種類があります。

外的ファクター

証券から見て外生的な変数は、株価の説明に利用されます。

具体的には、国内総生産(GDP)や消費者物価指数(CPI)、失業率や鉱工業生産指数、等があります。その他、月齢や太陽の黒点数を利用する事もあります。

外的ファクターは、トップダウンアプローチを重視する投資家が重宝するファクターです。

殊に個別株運用を行う投資家は、企業分析に時間をかけがちです。ですが企業業績は外部変数の動向に左右されます。マルチファクターモデルは、広い視野を持ち、投資環境の良し悪しを吟味する大切さを教えてくれます。

抽出されたファクター

既知の情報から抽出したファクターも、株価の説明に利用されます。

例えば株価指数や業種別株価指数があります。その他、直近高値からの経過日数や、2つの株の収益率の比、等が使われる事があります。

抽出されたファクターは、テクニカル重視の投資家が重宝するファクターです。

株価の値動きは需給で決まります。その株を欲しがる人が増えれば株価は上がり、売りたい人が増えれば株価は下がります。マルチファクターモデルは、指数の値動きから需給を読み取り、投資行動を選択する大切さを教えてくれます。

企業の特性

当然ながら企業特性は、株価変動の一因になります。

PERやPBR、配当利回りや収益予想や、その他企業に特有の値が使われます。

企業の特性は、ファンダメンタルズ重視の投資家が重宝するファクターです。

結局の所、割安な成長株の株価は上がります。マルチファクターモデルは、企業を理解しその未来を予測する事で、投資家は利益を得るという、基本的な事実を教えてくれます。

論理的な投資家になるために

投資家として、利益のために株価を追っかけ回す事は勿論重要です。それに加えて、ただ株価を追うだけではなく、論理的な根拠を持ち、現象の解釈を試みる事もやはり大切です。

定期的に、上記の各種株価変動因子・ファクターを点検してみて、効率的な資産運用を行えるようにポートフォリオの調整をするのも良いでしょう。

関連

マルチファクターモデルに関連する外部記事を紹介しておきます。

ローゼンバーグ型マルチファクターモデル(通称 BARRA モデル)

下記の記事では、図が充実しており、マルチファクターモデルについての理解を深める事ができます。

ローゼンバーグ型マルチファクターモデル(通称 BARRA モデル)は、 機関投資家の間に広く普及しているポートフォリオ最適化モデルです。 エクスポージャ行列からフィッティングを行ってファクターリターンを求めることを過去数十日分繰り返し、 蓄積したファクターリターンの分散と最新のエクスポージャおよびスペシフィックリスクを入力として、 最適化(二次計画法)によってポートフォリオを求めます。

出典:マルチファクターモデル(FIOPT)

ファーマ-フレンチの3ファクターモデル

当記事では、マルチファクターモデルの因子を「外的ファクター」「抽出されたファクター」「企業の特性」の3ファクターに分類しました。この3ファクターは、ファーマ-フレンチの3ファクターモデルの3ファクター「市場ポートフォリオ(時価総額加重平均型株価指数)」「時価総額」「簿価時価比率(PBRの逆数)」とは異なります。

ドル・コスト平均法 定額購入・積立投資で知っておくべきポイントは?

ドル・コスト平均法(英: dollar cost averaging)は、株式や投資信託などの金融商品の購入手法の一つで、等金額での買い付け(すなわち定額購入)を繰り返す事を指します。

リスク資産を一定額ずつ買い付ける場合、高値にある時は少ない株数(口数)を買い、安値にある時は多くの株数(口数)を買う事になります。

安値で多くの株数(口数)を買い集める手法であり、この定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入(等株数投資や等口数投資)と比較して、平均取得価格を低く抑える効果があります。

この記事ではドル・コスト平均法について、投資家が知っておくべきポイントをまとめます。

ドル・コスト平均法

ドル・コスト平均法は、等金額での買い付け(定額購入)を意味します。

ドル・コスト平均法を採用する大多数の投資家は、毎月一定額の金融商品を積み立てます。毎日買い付ける投資家や、年1度だけ買い付ける投資家は少数派だと言えます。

定額購入では、支払い額(コスト)が一定になるため、コスト平均法と名付けれられています。「ドル」は通貨であるドルを指しますが、一定の金額を「円貨」で買い付け支払ったとしても「円・コスト平均法」ではなく「ドル・コスト平均法」と呼ぶのが慣例です。

平均取得価格が低く抑えられる例

ドル・コスト平均法では、等口数投資と比べて平均取得価格を低く抑えられます。

例えば下図は、投信自動積立(三井住友銀行)でのシミュレーションで、ドルコスト平均法で平均取得価格が抑えられる例です。

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基準価額が10,000円→6,000円→17,000円→7,000円と推移した時、ドル・コスト平均法で3万円ずつ投資すれば、平均取得価額は8,541円ですが、一方で3万口ずつの投資では、平均取得価額は10,000円です。

この例では、ドル・コスト平均法による買い付けの方が平均取得価額が1,459円も安い水準になりました。

ドル・コスト平均法を数式で扱う

数式は、ドル・コスト平均法についての理解を深めます。この項目は、説明のために数式を利用していますが、数式を読み飛ばして日本語だけ読んだとしても十分に分かる構成にしています。

各種パラメータを見る

数式で、ドル・コスト平均法の支払額や含み損益を始めとするパラメータを確認します。

各種パラメータ

ドル・コスト平均法を利用し、時間 t (t=1,2,3, ... ,n) で、基準価額が a(t) (円/口)の証券を c 円ずつ購入する事を考えます。

この時、各種パラメータは下記の通りとなります。

項目 備考
支払い金額 nc 積み立て回数nに比例して増加
取得した口数 \Sigma \dfrac{c}{a(t)} 安値圏(a(t)が小さい局面)に、口数は大きく増加
時価 \Sigma \dfrac{c}{a(t)}a(n) 現在の基準価額(a(n))に比例する
含み損益 \Sigma \dfrac{a(n)-a(t)}{a(t)}c 後述(ドル・コスト平均法で利益を増やすためには?)

ドル・コスト平均法で利益を増やすためには?

数式は、ドル・コスト平均法で利益を増やす手法を語っています。利益を増やす方法は3種類です。

1つ目は積立額を増やす事(cを増やす事)です。プラスリターンの資産を積み立てている前提では、含み損益は積み立て額に比例します。

2つ目は回数を増やす事(nを増やす事)です。長期間での積み立ては、利益額を増やします。

3つ目は有利な金融商品を買う事(\frac{a(n)}{a(t)} を大きくする事)です。高リターンの金融商品は、ドル・コスト平均法による投資成果を向上させます。積み立てている金融商品が有利かどうかは、よく点検すべきです。

積み立てた資産のリスク

ドル・コスト平均法で積み立てていると、投資金額が投資期間に比例して大きくなります。

投資金額が徐々に大きくなれば、資産額の値動きの大きさ(リスク)も大きくなります。そしていつの間にか投資家のリスク許容度を超える可能性があります。

そうならないように、ドル・コスト平均法で積み立てをしていたとしても、毎月の支払い金額のみに注目せず、資産全体の時価にも注目する事が大切です。

ドル・コスト平均法と定量購入との比較

ドル・コスト平均法と定量買い付けを比較すれば、平均取得価額の点では、ドル・コスト平均法が有利です。

各手法の平均取得価額

ドル・コスト平均法と定量購入の平均取得価格を算出します。積み立て資産の、時間 t における基準価額を a(t) として計算します。

項目 ドル・コスト平均法(定額購入) 定量購入(等株数投資や等口数投資)
買い方 月々 c 円ずつ n 回だけ積み立てる 月々 m 口ずつ n 回だけ積み立てる
支払い額 cn \Sigma a(t)m
取得口数 \Sigma \dfrac{c}{a(t)} mn
平均取得価額
(支払額÷取得口数)
\dfrac{cn}{\Sigma \dfrac{c}{a(t)}}=\dfrac{n}{\Sigma \dfrac{1}{a(t)}} …① \Sigma \dfrac{a(t)m}{mn}=\Sigma \dfrac{a(t)}{n} …②

ドル・コスト平均法と定量積み立てとの平均取得価額の比較

平均取得価額の観点において、ドル・コスト平均法が定量買い付けよりも有利である事を示します。

比較では、相加平均≧相乗平均 を使い、①≦②を示します。


 = \dfrac{1}{\dfrac{1}{n} \Sigma \dfrac{1}{a(t)}} \le \dfrac{1}{(\Pi \dfrac{1}{a(t)})^{\frac{1}{n}}} ←相加平均≧相乗平均 を分母で利用
= (\Pi a(t))^{\frac{1}{n}} \le \Sigma \dfrac{a(t)}{n} ←相加平均≧相乗平均
=

①≦②が言えました。

ドル・コスト平均法の平均取得価額は、定量買い付けの平均取得価額よりも「低い」もしくは「同じ」になります。そして平均取得価額が低いと、勝率が上がります。ドル・コスト平均法は定量積み立てよりも、勝ちやすい(勝率が高い)無難な投資手法だと言えます。

ドル・コスト平均法は、一方的な相場では不利

上記のドル・コスト平均法と定量買い付けとの比較で注意すべきは、平均取得価額にしか注目していない点です。現実の運用において投資成果・利益は、投資金額だけではなく、最終的な受け取り金額で決まります。そのため、平均取得価額のみへの注目は片手落ちです。

事実として例えば右肩上がり相場では、ドル・コスト平均法よりも等口数投資の方が有利な投資成果を獲得できます。なぜならドル・コスト平均法で買い付け金額を一定にするよりも、口数を一定にして投資金額を増やして行った方が、支払額こそ増えますがそれ以上に値上がり益を大きく享受できるために、有利になるわけです。

右肩下がりの相場でも、ドル・コスト平均法は傷口を広げやすい不利な手法へと変化します。

このように、一方的な相場ではドル・コスト平均法は不利になります。

ドル・コスト平均法のシミュレーション

ドル・コスト平均法の特性を考えるため、日経平均株価を毎月1万円ずつ買い付けた場合のシミュレーションを作成しました。1970年1月から2016年10月にかけての期間のバックテストです。

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横軸は積み立て開始時期です。

青線が各月の買い付け価格(=日経平均株価の月の始値/スケールは左軸)、赤線が積み立て開始時期別の平均取得価額(スケールは左軸)です。緑線が積み立て開始時期別の損益(スケールは右軸)です。

平均取得価額の動向

平均取得価額は、まるで現在の価格に引っ張られているかのように上下しています。ドル・コスト平均法を利用した際、積み立て資産の価格が安くなれば平均取得価額も下がり、高くなれば平均取得価額も上がります。時価で新規購入した分が、今までの積み立て分に加えられるために、平均取得価格は時価に近づく方向に動くのです。

また、動画からは投資時間が長くなるにつれて、平均取得価額が動きにくくなっていく様子も分かります。積み立て時間が長くなるにつれて、新規購入額が今までの積み立て資産の総額に比べて小さな比率となるために、平均取得価格は動きにくくなってきます。

損益の動向

積み立ての時間が長くなれば損益が大きく動く

現在の時価に対する損益の感応度は、積み立て時間が長くなればなるほど高くなります。つまり、積み立て投資を続けた場合、ハイリスクの状態になります。上記動画でも、積み立て開始時期が早ければ早いほど損益が大きく動くようになる様子を確認できます。

バブル序盤の積み立て開始が最も高値掴みになる

また、バブル相場のピークで積み立てを開始した人よりも、バブル相場の頭(序盤)で積み立てを開始した人の方が、高値掴みの額が大きくなり、損失が拡大しやすい傾向が分かります。バブル崩壊時に積み立てを開始すれば、比較的すぐに平均取得価格が下がりますが、バブル形成時での積み立て開始は、長らく高値で積み立てる事になり、バブル崩壊の影響を大きく受ける事になります。

積み立て投資では、バブルの崩壊時よりもバブル形成時の方が裏目に出るわけです。逆にこの事は、投資を開始するベストなタイミングを教えてくれます。資産運用を開始するにあたり、最も有利な時期は「不況の始まり」です。

ドル・コスト平均法に関連する投資手法

定量売却

定量売却は、一定の株数・口数ずつ売却する方法です。

定量売却を行えば、高値では多くの金額を受け取り、安値では少額を受け取る事になります。そのため、定額売却よりも平均売却金額の点で有利です。

ドル・コスト平均法が買いのテクニックであれば、定量売却は売りのテクニックです。

購入時は、定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入よりも平均取得価額が低いですが、その逆に売却時では、定量売却は定額売却よりも平均売却価格が高くなりやすいです。

ただし、定量売却で必ず平均売却価格が高くなるとは限りません。売却期間が異なる場合があり、値動きによっては定額売却の方が良いパターンも出てきます。

金買口売法

ドル・コスト平均法と定量売却を同時に行う方法です。

例えば3万円買って2万口を売却するという設定をするならば、3万円と2万口の差分を買い付ける事になります。

この手法では、ドル・コスト平均法の平均取得価額を低く抑える効果と、定量売却の高値で売れる効果の両方を享受できます。

逆張り性向が強くなりますので、勝率が上がります。その一方で、右肩上がり相場では積立額が一方的に減って行くために、機会損失に繋がります。

変則型ドル・コスト平均法

定額投資をベースにしつつ、場合によって積み立て額を変化させる方法です。

特に含み損時に追加で購入を行う事を指します。含み損時に追加購入すれば、平均取得価額が下がりやすくなるため、通常のドル・コスト平均法と比べて勝率が上がります。

ドル・バリュー平均法

ドル・バリュー平均法は、リスク資産が値上がりした際は少なめに買うか売却をし、値下がりした際は多く買う買い付け手法です。リスク資産額を一定の水準に保ちます。(この水準はバリューパスと呼ばれます。)

ドル・コスト平均法と比べ、逆張り性向が強くなりますので、勝率が上がります。

まとめ

ドル・コスト平均法は、株式や投資信託などの金融商品の購入手法の一つで、等金額での買い付け(すなわち定額購入)を繰り返す事を指します。安値で多くの株数(口数)を買い集める手法であり、この定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入(等株数投資や等口数投資)と比較して、平均取得価格を低く抑える効果があります。

ドル・コスト平均法は勝率が高い方法ではありますが、一方的な相場では不利になりやすい投資手法です。例えば右肩上がり相場では機会損失に繋がり、十分なリターンを享受できない事があります。右肩下がりの相場でも、傷口を広げやすくなります。

ドル・コスト平均法によるリターンを増やすには、「積み立て額を増やす」「積み立て回数を増やす」「有利な金融商品を買う」の3種類の方法があります。ただ、積み立てを続けた場合は資産の値動きが大きくなりますので、注意が必要です。