アセット・ロケーション(資産の置き場所)について

アセット・ロケーションは、「資産の置き場所」を意味します。アセット・ローケーションの最適化は、資産運用のパフォーマンスを上げ、リスクの分散に効果を持ちます。

ここで「置き場所」とは、具体的には、「口座の種別」を指します。ただし、この他にも置き場所として、「資産の投資先の国や地域」を指す場合があります。

アセット・アロケーションとアセット・ロケーション

アセット・アロケーションとアセット・ロケーションは、単語としては「ア」がつくかどうかの違いしかありませんが、異なる意味を持っています。区別するために、各単語の意味をそれぞれ掲載しておきます。

アセット・アロケーション

投資家に馴染みがあるのは、アセット・アロケーションです。アセット・アロケーションは資産配分で、投資先の資産クラス(国内株式・国内債券・海外株式・海外債券・・・)の配分を意味します。

アセット・アロケーションは、英語ではasset allocationで、略して「AA」と表記される事があります。

アセット・ロケーション

一方でアセット・ロケーションは資産の置き場所を意味します。資産をどのような口座においているのか、資産をどの地域に置いているのか、等がアセット・ロケーションです。

アセット・ロケーションは英語ではasset locationで、略して「AL」と表記される事があります。

英語表記の略称(AA、AL)は、下記の記事を参照しました。

Asset location(wikipedia)

アセット・ロケーション

アセット・ロケーションには、口座の分類を意味する場合と、資産の地域を意味する場合があります。

口座の分類

資産運用における資産の置き場所の口座には、課税口座・非課税口座・課税を先送りする口座があります。これらの口座を適切に使い分ける事で、運用パフォーマンスの向上とリスク分散の効果が期待できます。

課税口座

日本では、課税口座には各証券会社の特定口座(証券取引のための普通の口座)があります。ちなみに私はSBI証券と楽天証券を使っています。

扱う金融商品や手数料で使い分ける

証券会社によって、利用できる金融商品や手数料が異なります。そのため運用スタイルによっては、利用する証券会社の追加・変更等の使い分けによって、今より有利な運用ができる事があります。

証券会社では一般口座と呼ばれる課税口座も利用できますが、特定口座との比較で投資家にとってのメリットはありませんので、ここでは無視します。

銀行の口座も課税口座です。預貯金・定期預金の金利は金融機関の違いにより異なりますので、選択の余地があります。そうは言えど、金利はどこもほぼ0%です。低金利時代の現在、銀行の口座の選択は有利不利にほとんど関係がなくなっています。

口座を増やしてリスクを分散

資産が増えてきた場合、セキュリティーのリスクを分散させるために口座の数を増やすべきです。

近年、大手銀行といえどサイバー攻撃を受けて顧客資産が流出する事件が起きています。2016年11月には、ハッカー集団が英テスコ銀行の顧客9000人の口座から総額250万ポンド(約3億6000万円)を盗み出す事件が発生しました。取り付け騒ぎに巻き込まれて事実上の資産凍結の被害を最小限にするためにも、資産の口座を分散すべきです。

非課税口座

非課税口座にはNISAがあります。

非課税は大変魅力的です。これを利用しない手はありません。ただし、NISA口座は1つしか開設できず、利用可能額は年間120万円(2016年以降)の上限が定められています。

なお、NISA口座での損失は特定口座と損益通算が出来ません。そのため、NISA口座で運用損失が出た場合に、損失を節税対策に転用できないというデメリットがあります。

課税先送り口座

課税先送り口座にはiDeCo等の確定拠出年金があります。

確定拠出年金は、運用益非課税です。また掛金は所得控除が適用され、所得税の支払い額が減り有利になります。このように運用時には強力なメリットがあります。

一方で確定拠出年金はデメリットも大きめです。まず、引き出し時(受け取り時)に課税対象となります。特定口座からの出金が無料である事と比べれば、運用の出口では明らかに不利です。

更に、最終的な現金受取については60歳以降が原則である点も、他の口座と比べ著しく柔軟性に欠けます。そして日本国の財政が火の車である事を考慮すれば、現在の確定拠出年金の税制が改悪されるリスクを気にしなければなりません。

資産の地域

アセット・ロケーションは、資産を運用している地域の比率を意味する事もあります。

下図は、旧Bloombergアプリでsummary→Locationとタップし表示した、私の運用資産の地域分布です。(厳密には株式個別銘柄の地域分散です。)2016年9月30日時点では、日本に48.62%、米国22.03%、香港17.64%、残りはその他の地域へ投資していました。

asset_location2016-09-30

(かつてBloombergアプリには上記アセット・ロケーションの他にも、アセット・タイプや業種の比率を表示する機能もありましたが、アップデートによる改悪で今は全て利用できなくなりました。大変便利だったため私は重宝していたのですが残念です。現在は、アプリの代わりにBloombergのサイトにログインし、ポートフォリオを確認するのが良い方法です。)

地域の分散は、ある地域で局所的な問題が発生したとしても、運用資産の毀損を最小限にします。地政学的リスクを小さく出来ると言えます。アセット・ロケーション(資産の地域)を考慮する事は、運用資産の安定的な成長に役立ちます。

バイ&ホールド(Buy&Hold) 何もしないという選択の偉大なる効果

バイ&ホールド(Buy&Hold)は投資手法の1つで、「投資家が(株式等の)有価証券を買い、長期にわたり持ち続ける事」を指します。この「何もしない」という選択の効果について投稿します。

バイ&ホールドの効果

相場に乗れる

バイ&ホールドでは、勢いのある値上がりした資産を、高い比率で持つ事になります。逆に下落している落ち目の資産の保有比率は、自動的に小さくなります。

詳細はコンスタントミックスとの比較の所で後述しますが、このように相場に乗れる点は、バイ&ホールドのメリットです。

低コストで有利

バイ&ホールドは、売買回数が最小限で済むため、売買手数料を抑制できます。この手数料の減少により、頻繁に売買を行うよりも投資パフォーマンスを向上させる効果が期待できます。

コンスタントミックスとの比較

バイ&ホールドの比較対象は、コンスタントミックスです。

コンスタントミックスとは?

コンスタントミックスは、各資産の比率を一定に保つ手法で、高くなった資産を売り、安くなった資産を買います。資産比率を保つための売買はリバランスと呼ばれます。

比較例① 上昇相場

下図は、上がったり下がったりしながら上がる資産である「A資産」と、無リスク資産である「B資産」を用いた資産運用の比較です。バイ&ホールドした場合が左で、リバランスしながら比率を保った場合が右になります。

buyandholdvs_cm

この例では、バイ&ホールド(B&H)の方が、コンスタントミックス(CM)よりも良い成績になりました。

コンスタントミックス(CM)では、A資産が上がった時に利益確定をし、B資産を買いました。ところがA資産は最終的に更に値上がりしたため、利益確定した分だけ値上がり益を享受できなくなりました。

一方でバイ&ホールド(B&H)では、A資産の利益を確定せず、A資産を持ち続けた事によって、更なる上昇を享受できました。時間が経つにつれ、ポートフォリオにおけるA資産の比率が増え、A資産の成長の効果をより多く得られるようになって来る点も注目に値します。

比較例② 下落相場

今度はA資産が上がったり下がったりしながら下落する相場での比較です。

buyandholdvs_cm3

この例でも、バイ&ホールド(B&H)の方が、コンスタントミックス(CM)よりも良い成績になりました。

コンスタントミックス(CM)では、A資産が下がった時に押し目買いをし、A資産を買い増しました。ところがA資産は最終的に更に値下がりしたため、このリバランス買いは傷口を広げる結果となりました。

一方でバイ&ホールド(B&H)では、B資産を手堅く持ち続けた事によって、A資産の値下がりの被害を最小限に抑える事が出来ました。時間が経つにつれ、ポートフォリオにおけるA資産の比率が減り、被害の影響が小さくなって来る点も注目に値します。

比較の教訓

バイ&ホールドは下手にリバランスするよりも好成績

上記の比較の通り、バイ&ホールドは、下手にリバランスする場合と比べて好成績となります。

バイ&ホールドは、売買手数料が少なく低コストな運用手法である事も忘れられません。特に効率的市場仮説を信じている投資家にとっては、何もしないでじっとしているという選択は合理的です。

このようにバイ&ホールドは、下手な資産配分を保ちリバランスを繰り返すのと比べて有利な手法だと言えます。

バイ&ホールドは一方的な相場で強い

バイ&ホールドは、特に一方的な相場で強いという性質を持っています。

この事から、バイ&ホールドは「パッシブ」かつ「順張り」の手法であると言われています。

市場にはトレンドがあり、株価はブラウン運動とは異なる様相を呈します。バイ&ホールドは、トレンドを享受するのに良い手法であると言えます。

余談:真の最強はコンスタントミックス

ここからは余談です。

この記事ではバイ&ホールドの良さをまとめましたが、取得したパラメーターの精度が高い場合は、「コンスタントミックスとリバランス」の優位性が強く出るようになります。

具体例:上昇相場の場合

上記の上昇相場の場合は、A資産に4倍のレバレッジをかけ、勝てば売り、負ければ買うというリバランスを繰り返すのが資産の成長に最良です。バイ&ホールドで持っている場合と比べて、良い投資成果を得られます。

レバレッジが4倍を超えればリスク過多で、負けた時に元手を失い儲けられません。4倍より小さければ勝った時のリターンが小さくなってしまいます。4倍が良いのです。この値は、対数最適戦略の計算から導出します。

現実的な資産運用に向けて

投資の実践的には、正確なパラメータを事前に取得する事は難しく、最適なポートフォリオの構築と正しいリバランスは困難です。

それよりも、むしろ心がけとして、「売買(リバランスを含む)を行う際は、バイ&ホールドに対する優位性について考える」のが良いかも知れません。

なお、リバランスを行う場合も、頻度は1年から3年に1度程度の低頻度が良い、という分析があります。

リバランス 資産配分のメンテナンスの手法とその効果とは?

ホームバイアス 自国偏重のアセット・アロケーションが有利な点とは?一方でデメリットは?

ホームバイアスについての投稿です。

ホームバイアスとは?

ホームバイアス(home bias)は自国資産への偏った投資を指します。ホームカントリーバイアス(home country bias)と呼ばれる事もあります。

多くの投資家はホームバイアスをかける

実際の運用において、多くの投資家は自国資産を高い比率で保有します。個人投資家のみならず、機関投資家でも同様です。

下図は、各国の機関投資家のアセット・アロケーションです。米国の機関投資家は米国資産に偏りが、ヨーロッパの機関投資家はヨーロッパ資産に偏りが、アジアの投資家はアジア資産に偏りがあります。

つまり、各国で多くの機関投資家はホームバイアスをかけた運用を行っているわけです。

HomeBias-InstitutionalInvestorByJPMorgan

なお、投資家の国内資産への非合理的な偏向は、ホーム・バイアス・パズルと呼ばれ、その原因を説明する試み・議論が発生しています。

ホームバイアスが無い状態とは?

株式投資においてホームバイアスが無いニュートラルな状態とは、世界の株式等の資産への加重平均(市場平均)への投資です。たとえば世界各国の株式の時価総額は、2016年4月現在下図のようになっています。

Jikasogaku201604

出典:世界各国のPER・PBR・時価総額(わたしのインデックス)

ホームバイアスがかからない状態では、米国株を半数程度の比率にし、次にヨーロッパ・アジアの先進国、最後に新興国の順に投資する事になります。

ホームバイアスをかける理由

適度なホームバイアスは、運用パフォーマンスを高めます。ホームバイアスをかけるべき理由は、下記の通り、いくつかあります。

情報が多い

身近な地域の情報は多くあります。大半の情報も自国語であり、外国人投資家よりも有利に情報が手に入ります。

この情報の非対称性により、自国への投資は有利です。そして、有利である事に伴い期待される高リターンは、自国資産の組み入れ比率を高める方向に働きます。

制度上で有利

自国への投資は、制度上で有利になりやすいです。

逆に外国への投資は、税制上で不利になる事があります。外国人が多く課税される制度や、投資先と自国とでの2重課税の問題が発生する事があります。

また、日本では株主優待制度があり、海外居住者よりも日本居住者は、日本株を買いやすくなります。

手数料の問題

一般的に自国への投資は手数料が割安です。それに対して、外国への投資は手数料が割高です。

手数料は安い方が、投資成果を得やすくなります。結果として、自国への投資に偏りが発生します。

為替リスク

為替リスクがある分だけ、外国の資産の値動きは大きくなります。逆に自国資産は低リスクで魅力的に見えます。この低いリスクは資産の成長性を高める事があるため、自国資産の投資比率を高める方向に働きます。

多国籍企業へ投資する場合

自国に上場される多国籍企業への投資により、国際分散投資を実現する事で、事実上ホームバイアスがかからない状態を作る事ができます。

多国籍企業への投資は、地域・通貨・金利・政策リスクの分散に繋がります。世界経済の成長を享受できるかも知れません。このように、たとえ自国通貨建ての資産が多くても、本質的には十分な国際分散投資と言える場合があります。

国際分散投資をした方が良い理由

ホームバイアスをかけるべきだと個人的に考えていますが、その一方で過度にホームバイアスをかけた運用はデメリットが大きくなります。つまりホームバイアスはかけ過ぎずに、ある程度の国際分散投資を行う事が大切です。国際分散投資にはメリットがあります。

リスクの低減

国際分散投資では、地域・通貨・金利・政策リスクが分散されます。

特に自国の情報のアドバンテージがない場合(例えば投資用語の知識が無く、日本語で書かれた決算短信を読めない素人日本人投資家等)は、分散投資でリスクを減らすのが賢明です。

攻めの投資をする場合

攻めの投資をする場合、国内外の区分に拘らず視野を世界に向け、好成績が期待できる各国の資産でポートフォリオを構築する事が大切です。

そもそもホームバイアスをかける投資家が多くいるという事は、市場の非効率性とCAPMが厳密には成り立たない事を意味します。つまり裁定取引の機会はそこら中に転がっています。ファンダメンタルズ指標から判断して割安になった国の株・上がっていく株を買い向かう事は、良い成績が期待できます。

更に、各国資産へ分散投資をすると分散投資の効果としてリスクが減るわけですが、このリスク減によってリスク資産への追加投資が可能になります。そして実施した追加投資の結果として、リターンの向上が期待できます。

コピーキャット ポートフォリオの模倣は何が良いか?コピーの障害は何か?

資産運用において、独自のリサーチに尽力するのは重要ですが、一方でうまくいっている投資家の真似をする事も大切です。

憧れの投資家や、好成績の投資信託があれば、そのポートフォリオを真似してみるのも良い経験になります。このような模倣のテクニックは、コピーキャットと呼ばれます。コピーキャットは、日本語で模倣者や猿真似に相当する単語です。

完全なコピーでなくとも、上手な投資家の保有銘柄群から、好みの銘柄をピックアップして保有してみるもの良いと考えています。

コピーキャットの方法

好成績の投資家ポートフォリオを知る

コピーキャットは、好成績の投資家ポートフォリオを知る事から始まります。

著名な投資家であるWarren Buffettのポートフォリオは、Warren Buffett(gurufocus.com)等から取得できます。このサイトでは、保有比率に加えて銘柄別の売買動向(買っているのか売っているのか)も確認する事ができます。

投資信託を模倣する場合、月報や週報等の報告書に掲載されている、銘柄とその組み入れ比率を確認します。多くの投資信託の場合、たとえ全ての銘柄の状態が分からなくても、組み入れ上位10銘柄程度は記載されています。

そしてその銘柄を買い増したのか、売り払ったのかは、新しい報告書と古い報告書を比較する事でだいたい分かります。更に各銘柄の値動きまで踏まえ比較すれば、売買状況がほぼ正確に分かります。

売買を行う

好成績の投資家ポートフォリオを参考に売買を行います。

ポートフォリオを完全に真似る方法と、買い増している銘柄を真似して購入する方法の2種類の方法があります。

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コピーキャットのメリット

模倣すべき好成績の投資家ポートフォリオをコピーできれば、良い投資成果を残せます。また、コピーキャットを行えば、スキルの向上が期待できます。

好成績な投資家のリターンの享受

コピーキャットで、好成績な投資家のリターンを享受できます。

好成績な投資家ポートフォリオを真似をしていれば、追随する形で模倣者の投資パフォーマンスは良くなります。

Warren Buffettの保有銘柄が世界中の投資家から注目されるのは、多くの投資家がBuffettの真似をしようとしているからです。

Buffettに限らず、多くの機関投資家のリサーチ力は、素人の個人投資家と比べれば優れています。機関投資家は優良銘柄を発掘してくれる事でしょう。

投資家としてのスキル向上

コピーキャットは、スキル向上に有効です。

上手い人が「どうしてその銘柄を持ったのか」を深く考えられるため、優良銘柄の特徴を学べます。

コピーキャットのデメリット

コピーキャットが上手くいかない事もあります。

完全なコピーは難しい

個人投資家が機関投資家のコピーをする場合、売買単位(単元株)による最低売買金額の関係で、完全なコピーは難しくなります。

また、売買手数料が割高になり、パフォーマンスを落とす可能性があります。

投資期間の違い

投資期間(investment horizon)が違えば、適切なポートフォリオは異なります。

個人投資家の運用期間は、機関投資家(例えば年金基金等)と比べれば短くなります。コピー元の投資家の投資期間が、模倣者の投資期間と大きく異なる場合、模倣は意味が無いかも知れません。

完全なコピーでない場合にパフォーマンスが追随できない問題

完全なコピーではない場合は、パフォーマンスの追随ができないかも知れません。

機関投資家ポートフォリオ全体で、リターンやリスクを管理し最適化します。部分的なコピーでは、有利なパフォーマンスが得られない可能性があります。

最新の情報が得られない

コピーキャットは、コピー元の投資家ポートフォリオを知る事から始まります。

ただしそれは主に、運用報告書が出た後など、少し時間が経ってから知る事になります。その間に、既に大きく値上がりしているかも知れません。特に模倣者が多く居る場合は乗り遅れと高値掴みの危険性が増します。

また、頻繁に売買を行う投資家のコピーをする場合、その投資家が何を買っているかを判別するのは困難な事があります。

まとめ

コピーキャット運用を行えば、好成績な投資家に追随する形で良いパフォーマンスを残せます。運用スキルの向上にも有効です。

一方で、完全なコピーは手数料や投資期間の問題により、難しい場合もあります。

リバランス 資産配分のメンテナンスの手法とその効果とは?

資産運用において、資産配分のメンテナンス手法であるリバランスの方法と効果についてまとめます。

リバランスとは?

資産運用において、資産配分を再調整(バランスを取りなおす)するために行う売買をリバランスと呼びます。通常のリバランスでは、値上がりによって構成比率が上がった資産を売却し、値下がりによって構成比率が下がった資産を買い付けます。

資産配分の経時変化とリバランス

目標とするポートフォリオや資産配分(アセット・アロケーション)があったとします。最初、目標とする資産配分で買い付けたとしても、時間が経つとともに、各資産は値上がりや値下がりをするため、資産のバランスは崩れていきます。

こうして経時変化により崩れた資産配分のバランスを、元の配分に戻す売買がリバランスです。リバランスでは、高くなった資産を売り、安くなった資産を買い増します。

リバランスの具体例

下記の動画は、リバランス売買について図示しています。

rebalance

例えば目標とする資産配分は、A,B,C,Dの各資産を25%ずつ保有する事とします。ところが時間が経ち、各資産の値上がり、または、値下がりにより、当初のバランスが崩れました。リバランスでは、B,Cの資産を売却し、A,Dの資産を買い増します。この売買を通して、資産配分を元に戻します。

リバランスの過程

リバランスは、下記の4つの過程で行われます。

資産配分を決める

まずは、目標とする資産配分を決めます。

資産配分の決定と運用の手法は、後述する通り多くの種類があります。資産配分は固定しても良いですし、動的なものでも良いです。

伝統的な資産運用手法では、資産配分は固定するものだという考えが浸透しています。

値動きを記録する

将来比較するために、資産配分を記録します。

各資産をどの程度保有しているのか、値動きはどの程度の大きさなのか、等の情報は、リバランスの必要性の検証時に使う事があります。

比較する

現在の資産配分と、目標とする資産配分とを比較します。そして、リバランスが必要かどうかを検証します。

目標と比べ、ポートフォリオのリスクが過多・過小であるポートフォリオは、リバランスの対象です。

修正する

リバランスが必要だと判断すれば、リバランスを行います。

ポートフォリオに、目標の比率よりも多く組み入れられている資産を売却し、目標の比率よりも少ない資産を買い増します。

リバランスの効果

リバランスで投資成果の向上を期待できます。

安値買い・高値売りの実践

リバランスによる売買では、高くなった資産を売り、安くなった資産を買う事になります。

これは「安く買って高く売る」という投資成功のための売買の実践です。そのため適切なリバランスは、投資成績を向上させます。

長期的な運用をする場合、値上がりした資産は少しは売らなければなりません。値上がりした資産を持ち続ける事は、その資産への掛け金を増やす事を意味しており、値下がりした際の傷口を広げる原因になるからです。

同様に、値下がりした資産は掛け金が減っている事を意味します。今後の値上がり益の享受のために、少し買い増さなければなりません。

元本確保

また、リバランスで高くなった資産を売れば、投資元本の確保に繋がります。

投資家にとって投資元本は大切です。たとえ暴落相場に出くわし、資産の一部が毀損したとしても、元本が確保されているのであれば、投資家は再起が可能になります。

資産成長の理論

適切なリバランスは、上記の通り安値買い・高値売りに繋がり、元本確保から成長性を高めます。そのため、リバランスは資産を増やすのに有効です。そして、リスク資産をただ持つだけの場合と比べ、良い投資成果を得られる事があります。

リバランスで資産が成長する例

極端な例ですが、2分の1の確率で株価が2倍になり、2分の1の確率で株価が半分になる銘柄があったとします。この銘柄をただ持っているだけの場合は、長期的には上がったり下がったりするだけで、大きな利益を期待できません。

ところが無リスク資産を50%組み入れ、リバランスを繰り返せば平均すると2期間で9/8倍(112.5%)ずつの成長が期待できます。

下図は、この株式を用いたリバランスのシミュレーション結果です。金融工学ノート 4 ポートフォリオ成長の最適化と LOPF 理論の2ページ目からの引用です。

LOPFRebalance_FE_4P2
↑株式を保有する場合(青)と比べ、適切なポートフォリオでリバランスを繰り返す場合(赤)の方が良いパフォーマンスを示しています。

リバランスで成長性が高まる理由

上記の例において、リバランスを繰り返す方がパフォーマンスが良くなる事は、計算から導く事ができます。

保有資産の\alphaを株で、1-\alphaを無リスク資産で持った際、株価が上がった時のリターンR_{+}と、株価が下がった時のリターンR_{-}を考えます。

R_{+}=1+\alpha , R_{-}=1 - \frac{1}{2} \alpha
R_{+}R_{-}=\frac{9}{8}-\frac{1}{2}(\alpha-\frac{1}{2})^{2}
この事から、\alpha=\frac{1}{2}で成長性が最も高まる事を導けます。

より一般的には、投資家は対数最適化戦略(リターンの対数をとって確率で重み付けしたパラメータを最大化する戦略)を用いて、期待成長率の最大化を目指します。資産の期待成長率を高め最適化する方法は、上記LOPF理論についてのノートの他は、ケリー基準(¥∞)が詳しいです。

リバランスのタイミング

定期的なリバランス

半年に1回、1年に1回、3年に1回等、定期的にリバランスをする方法があります。

定期的なリバランスは、あまり頻繁に行わない方が良いとされます。頻繁なリバランスはトレンドに逆らう事になり、また手数料も多くかかります。そのため、適度に「ほったらかす」のも有効です。例えば3年に1回程度のリバランスがパフォーマンスが良いというデータもあります。

世界標準の投資法 その2 ~投資したら、定期的に当初の資産配分に戻す(わたしのインデックス)でのバックテスト(下図)によれば、定期リバランスの中では「3年毎のリバランス」の成績が良く、分析期間では年率6.5%程度あります。これは毎月リバランスと比べて0.8%程度良い値です。

rebalance197903-200902-30years
↑1979年3月から2009年2月にかけての30年間のデータを用いた検証です。サイト「わたしのインデックス」から取得しました。毎月リバランス等、頻繁なリバランスはリターンを下げている様子が図示されています。

資産は短期的にはトレンドを持ち、ひとつの方向に向かいやすい傾向があります。このため頻繁なリバランスは、安くなって買い増しした資産が更に下がる・高くなって売った資産が更に上がり機会損失を被る、等のデメリットを招きます。頻繁なリバランスを避け、年単位でバランスを確認するのも良いでしょう。

乖離が大きくなった場合にリバランス

目標からの乖離が大きくなった際にリバランスをする方法があります。

リバランスを行う目安とする、資産配分の乖離の程度は、一概には決められません。リスク許容度が小さければ、リスクが大きくなったらすぐにリバランスをします。売買手数料が割高であれば、大きな乖離もある程度許容した方がパフォーマンスが良くなります。

リバランスによるリスク低減の効果・リターンの期待値の変化や他の資産との相関も考慮に入れる事が出来ます。

バランスファンドを利用した自動リバランス

バランスファンドを利用すれば、自動的なリバランスを行えます。

バランスファンドは、各アセット・クラスの資産を組み入れた投資信託です。バランスファンドのリバランスは、投資信託の運用者によって自動的に行われます。そのため、バランスファンドを保有する投資家は、リバランス売買を行う手間を省く事ができます。

バランスファンドのリバランス機能を利用すれば、個別銘柄売買によるリバランスと比べて売買コストの負担を少なくできます。売買コストの低下は、運用資産の増加と複利効果の享受に繋がります。その一方で、バランスファンド保有には信託報酬の負担がありますので、このコストは投資家の利益を圧迫する1つの要素となります。

節税を意識したリバランス

年末のタイミングに、節税を意識したリバランスを行う事があります。

損益通算を意識したリバランス

損益通算は、節税の基本です。

リバランスで売却したい局面にて、もし含み損のある銘柄を抱えているのであれば、含み益銘柄と併せて売る事を検討します。併せて売れば、損益通算で確定益を小さく抑えられるために、課税額を小さくすることが出来るからです。

ノーセルリバランス

節税を意識したリバランスとして、ノーセルリバランスがあります。

各資産の買い付け金額を調整する事で、売却を伴わずに資産配分のバランスをとる事を、ノーセルリバランスと呼びます。このリバランス手法は、資産形成期の投資家が採用しやすい手法です。

ノーセルリバランスでは、売却益がすぐには発生しないため、売却益に対する課税対象とはなりません。そのため、節税の効果があります。勿論最終的には含み益は、ライフステージにおいて資産を取り崩すタイミングで課税される事になります。とは言え、支払いを先延ばしに出来る分だけ、多くの複利効果を享受できます。

目標とする資産配分の決め方

資産配分の種別

資産配分にはいくつかの種類があります。

基本的な資産配分

コンスタント・ミックス(CM)の資産配分は、一定の配分を保ちます。逆張り型の手法で、多くの長期投資家がこの方針で運用しています。

バイアンドホールド(B&H)は、買ったまま売らずに持ち続けるという配分です。バイアンドホールドは下手な売買を繰り返す場合と比較し、売買手数料を低く抑えられます。そのため、特別な理由が無い限り、買った銘柄を持ち続ける方法は有利だと言われています。

その他の資産配分

他にも資産配分方針は多く知られています。

逆張り型ではタクティカル・アセット・アロケーション(TAA)と呼ばれる、指標を根拠に割高資産を売り、割安資産を買う手法があります。

一方順張り型には、リスクパリティ法と呼ばれる、リスク値を一定に保つ運用や、ダイナミック・アセット・アロケーション(DAA)と呼ばれる、良いパフォーマンスが得られると考えられる金融商品・アセットクラスに機動的に資金を投入していくスタイルがあります。

GPIFの資産配分

バランスを考えるのが面倒臭くなった場合は、国内最大・最強の投資機関であるGPIFのポートフォリオを参考にします。

GPIFは、139兆8,249億円(平成27年度第3四半期末現在 ※1)を運用する巨大な組織で、無難な運用が期待できます。このようにプロの真似をする運用手法は、コピーキャットと呼ばれています。

※1 参照:最新の運用状況ハイライト 2016/5/25確認

現在のGPIFのポートフォリオは、基本ポートフォリオの考え方によれば、国内債券35% 国内株式25% 外国債券15% 外国株式25%という比率が目標として設定されています。

GPIF-Asset-Allocation2016
↑GPIFのアセット・アロケーションです。2016年現在GPIFは、国内資産を60%組み入れており、ホームバイアス(自国資産への偏り)をかけた、コンスタント・ミックス型のアセット・アロケーションを採用しています。

まとめ

資産運用において、資産配分の再調整(バランスを取りなおす)事をリバランスと呼びます。経時変化により崩れた、資産配分のバランスを元に戻す売買がリバランスです。リバランスでは、高くなった資産を売り、安くなった資産を買う事になります。

このリバランス売買は、安値買い・高値売りに繋がり、更にリバランスを行う事で元本確保ができます。そしてこれらの効果の結果として、リバランスは資産の成長性を高めます。

リバランスは、定期的にリバランスを行う方法や、乖離が大きくなった場合にリバランスを行う方法、バランスファンドを利用する方法があります。また、節税を意識した売買を行う事もあります。

目標とする資産配分には、静的なものや動的なものがあります。多くの投資家は、静的なコンスタント・ミックス型のアセット・アロケーションを採用しています。資産比率は、相場観に従い工夫しますが、最大の機関投資家であるGPIFの配分を参考にするのも良さそうです。