ドル・コスト平均法 定額購入・積立投資で知っておくべきポイントは?

ドル・コスト平均法(英: dollar cost averaging)は、株式や投資信託などの金融商品の購入手法の一つで、等金額での買い付け(すなわち定額購入)を繰り返す事を指します。

リスク資産を一定額ずつ買い付ける場合、高値にある時は少ない株数(口数)を買い、安値にある時は多くの株数(口数)を買う事になります。

安値で多くの株数(口数)を買い集める手法であり、この定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入(等株数投資や等口数投資)と比較して、平均取得価格を低く抑える効果があります。

この記事ではドル・コスト平均法について、投資家が知っておくべきポイントをまとめます。

ドル・コスト平均法

ドル・コスト平均法は、等金額での買い付け(定額購入)を意味します。

ドル・コスト平均法を採用する大多数の投資家は、毎月一定額の金融商品を積み立てます。毎日買い付ける投資家や、年1度だけ買い付ける投資家は少数派だと言えます。

定額購入では、支払い額(コスト)が一定になるため、コスト平均法と名付けれられています。「ドル」は通貨であるドルを指しますが、一定の金額を「円貨」で買い付け支払ったとしても「円・コスト平均法」ではなく「ドル・コスト平均法」と呼ぶのが慣例です。

平均取得価格が低く抑えられる例

ドル・コスト平均法では、等口数投資と比べて平均取得価格を低く抑えられます。

例えば下図は、投信自動積立(三井住友銀行)でのシミュレーションで、ドルコスト平均法で平均取得価格が抑えられる例です。

DC-ave-smbc-tsumitate

基準価額が10,000円→6,000円→17,000円→7,000円と推移した時、ドル・コスト平均法で3万円ずつ投資すれば、平均取得価額は8,541円ですが、一方で3万口ずつの投資では、平均取得価額は10,000円です。

この例では、ドル・コスト平均法による買い付けの方が平均取得価額が1,459円も安い水準になりました。

ドル・コスト平均法を数式で扱う

数式は、ドル・コスト平均法についての理解を深めます。この項目は、説明のために数式を利用していますが、数式を読み飛ばして日本語だけ読んだとしても十分に分かる構成にしています。

各種パラメータを見る

数式で、ドル・コスト平均法の支払額や含み損益を始めとするパラメータを確認します。

各種パラメータ

ドル・コスト平均法を利用し、時間 t (t=1,2,3, ... ,n) で、基準価額が a(t) (円/口)の証券を c 円ずつ購入する事を考えます。

この時、各種パラメータは下記の通りとなります。

項目 備考
支払い金額 nc 積み立て回数nに比例して増加
取得した口数 \Sigma \dfrac{c}{a(t)} 安値圏(a(t)が小さい局面)に、口数は大きく増加
時価 \Sigma \dfrac{c}{a(t)}a(n) 現在の基準価額(a(n))に比例する
含み損益 \Sigma \dfrac{a(n)-a(t)}{a(t)}c 後述(ドル・コスト平均法で利益を増やすためには?)

ドル・コスト平均法で利益を増やすためには?

数式は、ドル・コスト平均法で利益を増やす手法を語っています。利益を増やす方法は3種類です。

1つ目は積立額を増やす事(cを増やす事)です。プラスリターンの資産を積み立てている前提では、含み損益は積み立て額に比例します。

2つ目は回数を増やす事(nを増やす事)です。長期間での積み立ては、利益額を増やします。

3つ目は有利な金融商品を買う事(\frac{a(n)}{a(t)} を大きくする事)です。高リターンの金融商品は、ドル・コスト平均法による投資成果を向上させます。積み立てている金融商品が有利かどうかは、よく点検すべきです。

積み立てた資産のリスク

ドル・コスト平均法で積み立てていると、投資金額が投資期間に比例して大きくなります。

投資金額が徐々に大きくなれば、資産額の値動きの大きさ(リスク)も大きくなります。そしていつの間にか投資家のリスク許容度を超える可能性があります。

そうならないように、ドル・コスト平均法で積み立てをしていたとしても、毎月の支払い金額のみに注目せず、資産全体の時価にも注目する事が大切です。

ドル・コスト平均法と定量購入との比較

ドル・コスト平均法と定量買い付けを比較すれば、平均取得価額の点では、ドル・コスト平均法が有利です。

各手法の平均取得価額

ドル・コスト平均法と定量購入の平均取得価格を算出します。積み立て資産の、時間 t における基準価額を a(t) として計算します。

項目 ドル・コスト平均法(定額購入) 定量購入(等株数投資や等口数投資)
買い方 月々 c 円ずつ n 回だけ積み立てる 月々 m 口ずつ n 回だけ積み立てる
支払い額 cn \Sigma a(t)m
取得口数 \Sigma \dfrac{c}{a(t)} mn
平均取得価額
(支払額÷取得口数)
\dfrac{cn}{\Sigma \dfrac{c}{a(t)}}=\dfrac{n}{\Sigma \dfrac{1}{a(t)}} …① \Sigma \dfrac{a(t)m}{mn}=\Sigma \dfrac{a(t)}{n} …②

ドル・コスト平均法と定量積み立てとの平均取得価額の比較

平均取得価額の観点において、ドル・コスト平均法が定量買い付けよりも有利である事を示します。

比較では、相加平均≧相乗平均 を使い、①≦②を示します。


 = \dfrac{1}{\dfrac{1}{n} \Sigma \dfrac{1}{a(t)}} \le \dfrac{1}{(\Pi \dfrac{1}{a(t)})^{\frac{1}{n}}} ←相加平均≧相乗平均 を分母で利用
= (\Pi a(t))^{\frac{1}{n}} \le \Sigma \dfrac{a(t)}{n} ←相加平均≧相乗平均
=

①≦②が言えました。

ドル・コスト平均法の平均取得価額は、定量買い付けの平均取得価額よりも「低い」もしくは「同じ」になります。そして平均取得価額が低いと、勝率が上がります。ドル・コスト平均法は定量積み立てよりも、勝ちやすい(勝率が高い)無難な投資手法だと言えます。

ドル・コスト平均法は、一方的な相場では不利

上記のドル・コスト平均法と定量買い付けとの比較で注意すべきは、平均取得価額にしか注目していない点です。現実の運用において投資成果・利益は、投資金額だけではなく、最終的な受け取り金額で決まります。そのため、平均取得価額のみへの注目は片手落ちです。

事実として例えば右肩上がり相場では、ドル・コスト平均法よりも等口数投資の方が有利な投資成果を獲得できます。なぜならドル・コスト平均法で買い付け金額を一定にするよりも、口数を一定にして投資金額を増やして行った方が、支払額こそ増えますがそれ以上に値上がり益を大きく享受できるために、有利になるわけです。

右肩下がりの相場でも、ドル・コスト平均法は傷口を広げやすい不利な手法へと変化します。

このように、一方的な相場ではドル・コスト平均法は不利になります。

ドル・コスト平均法のシミュレーション

ドル・コスト平均法の特性を考えるため、日経平均株価を毎月1万円ずつ買い付けた場合のシミュレーションを作成しました。1970年1月から2016年10月にかけての期間のバックテストです。

dc-ave-n225

横軸は積み立て開始時期です。

青線が各月の買い付け価格(=日経平均株価の月の始値/スケールは左軸)、赤線が積み立て開始時期別の平均取得価額(スケールは左軸)です。緑線が積み立て開始時期別の損益(スケールは右軸)です。

平均取得価額の動向

平均取得価額は、まるで現在の価格に引っ張られているかのように上下しています。ドル・コスト平均法を利用した際、積み立て資産の価格が安くなれば平均取得価額も下がり、高くなれば平均取得価額も上がります。時価で新規購入した分が、今までの積み立て分に加えられるために、平均取得価格は時価に近づく方向に動くのです。

また、動画からは投資時間が長くなるにつれて、平均取得価額が動きにくくなっていく様子も分かります。積み立て時間が長くなるにつれて、新規購入額が今までの積み立て資産の総額に比べて小さな比率となるために、平均取得価格は動きにくくなってきます。

損益の動向

積み立ての時間が長くなれば損益が大きく動く

現在の時価に対する損益の感応度は、積み立て時間が長くなればなるほど高くなります。つまり、積み立て投資を続けた場合、ハイリスクの状態になります。上記動画でも、積み立て開始時期が早ければ早いほど損益が大きく動くようになる様子を確認できます。

バブル序盤の積み立て開始が最も高値掴みになる

また、バブル相場のピークで積み立てを開始した人よりも、バブル相場の頭(序盤)で積み立てを開始した人の方が、高値掴みの額が大きくなり、損失が拡大しやすい傾向が分かります。バブル崩壊時に積み立てを開始すれば、比較的すぐに平均取得価格が下がりますが、バブル形成時での積み立て開始は、長らく高値で積み立てる事になり、バブル崩壊の影響を大きく受ける事になります。

積み立て投資では、バブルの崩壊時よりもバブル形成時の方が裏目に出るわけです。逆にこの事は、投資を開始するベストなタイミングを教えてくれます。資産運用を開始するにあたり、最も有利な時期は「不況の始まり」です。

ドル・コスト平均法に関連する投資手法

定量売却

定量売却は、一定の株数・口数ずつ売却する方法です。

定量売却を行えば、高値では多くの金額を受け取り、安値では少額を受け取る事になります。そのため、定額売却よりも平均売却金額の点で有利です。

ドル・コスト平均法が買いのテクニックであれば、定量売却は売りのテクニックです。

購入時は、定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入よりも平均取得価額が低いですが、その逆に売却時では、定量売却は定額売却よりも平均売却価格が高くなりやすいです。

ただし、定量売却で必ず平均売却価格が高くなるとは限りません。売却期間が異なる場合があり、値動きによっては定額売却の方が良いパターンも出てきます。

金買口売法

ドル・コスト平均法と定量売却を同時に行う方法です。

例えば3万円買って2万口を売却するという設定をするならば、3万円と2万口の差分を買い付ける事になります。

この手法では、ドル・コスト平均法の平均取得価額を低く抑える効果と、定量売却の高値で売れる効果の両方を享受できます。

逆張り性向が強くなりますので、勝率が上がります。その一方で、右肩上がり相場では積立額が一方的に減って行くために、機会損失に繋がります。

変則型ドル・コスト平均法

定額投資をベースにしつつ、場合によって積み立て額を変化させる方法です。

特に含み損時に追加で購入を行う事を指します。含み損時に追加購入すれば、平均取得価額が下がりやすくなるため、通常のドル・コスト平均法と比べて勝率が上がります。

ドル・バリュー平均法

ドル・バリュー平均法は、リスク資産が値上がりした際は少なめに買うか売却をし、値下がりした際は多く買う買い付け手法です。リスク資産額を一定の水準に保ちます。(この水準はバリューパスと呼ばれます。)

ドル・コスト平均法と比べ、逆張り性向が強くなりますので、勝率が上がります。

まとめ

ドル・コスト平均法は、株式や投資信託などの金融商品の購入手法の一つで、等金額での買い付け(すなわち定額購入)を繰り返す事を指します。安値で多くの株数(口数)を買い集める手法であり、この定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入(等株数投資や等口数投資)と比較して、平均取得価格を低く抑える効果があります。

ドル・コスト平均法は勝率が高い方法ではありますが、一方的な相場では不利になりやすい投資手法です。例えば右肩上がり相場では機会損失に繋がり、十分なリターンを享受できない事があります。右肩下がりの相場でも、傷口を広げやすくなります。

ドル・コスト平均法によるリターンを増やすには、「積み立て額を増やす」「積み立て回数を増やす」「有利な金融商品を買う」の3種類の方法があります。ただ、積み立てを続けた場合は資産の値動きが大きくなりますので、注意が必要です。

関連記事


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。