ドル・コスト平均法 定額購入・積立投資で知っておくべきポイントは?

ドル・コスト平均法(英: dollar cost averaging)は、株式や投資信託などの金融商品の購入手法の一つで、等金額での買い付け(すなわち定額購入)を繰り返す事を指します。

リスク資産を一定額ずつ買い付ける場合、高値にある時は少ない株数(口数)を買い、安値にある時は多くの株数(口数)を買う事になります。

安値で多くの株数(口数)を買い集める手法であり、この定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入(等株数投資や等口数投資)と比較して、平均取得価格を低く抑える効果があります。

この記事ではドル・コスト平均法について、投資家が知っておくべきポイントをまとめます。

ドル・コスト平均法

ドル・コスト平均法は、等金額での買い付け(定額購入)を意味します。

ドル・コスト平均法を採用する大多数の投資家は、毎月一定額の金融商品を積み立てます。毎日買い付ける投資家や、年1度だけ買い付ける投資家は少数派だと言えます。

定額購入では、支払い額(コスト)が一定になるため、コスト平均法と名付けれられています。「ドル」は通貨であるドルを指しますが、一定の金額を「円貨」で買い付け支払ったとしても「円・コスト平均法」ではなく「ドル・コスト平均法」と呼ぶのが慣例です。

平均取得価格が低く抑えられる例

ドル・コスト平均法では、等口数投資と比べて平均取得価格を低く抑えられます。

例えば下図は、投信自動積立(三井住友銀行)でのシミュレーションで、ドルコスト平均法で平均取得価格が抑えられる例です。

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基準価額が10,000円→6,000円→17,000円→7,000円と推移した時、ドル・コスト平均法で3万円ずつ投資すれば、平均取得価額は8,541円ですが、一方で3万口ずつの投資では、平均取得価額は10,000円です。

この例では、ドル・コスト平均法による買い付けの方が平均取得価額が1,459円も安い水準になりました。

ドル・コスト平均法を数式で扱う

数式は、ドル・コスト平均法についての理解を深めます。この項目は、説明のために数式を利用していますが、数式を読み飛ばして日本語だけ読んだとしても十分に分かる構成にしています。

各種パラメータを見る

数式で、ドル・コスト平均法の支払額や含み損益を始めとするパラメータを確認します。

各種パラメータ

ドル・コスト平均法を利用し、時間 t (t=1,2,3, ... ,n) で、基準価額が a(t) (円/口)の証券を c 円ずつ購入する事を考えます。

この時、各種パラメータは下記の通りとなります。

項目 備考
支払い金額 nc 積み立て回数nに比例して増加
取得した口数 \Sigma \dfrac{c}{a(t)} 安値圏(a(t)が小さい局面)に、口数は大きく増加
時価 \Sigma \dfrac{c}{a(t)}a(n) 現在の基準価額(a(n))に比例する
含み損益 \Sigma \dfrac{a(n)-a(t)}{a(t)}c 後述(ドル・コスト平均法で利益を増やすためには?)

ドル・コスト平均法で利益を増やすためには?

数式は、ドル・コスト平均法で利益を増やす手法を語っています。利益を増やす方法は3種類です。

1つ目は積立額を増やす事(cを増やす事)です。プラスリターンの資産を積み立てている前提では、含み損益は積み立て額に比例します。

2つ目は回数を増やす事(nを増やす事)です。長期間での積み立ては、利益額を増やします。

3つ目は有利な金融商品を買う事(\frac{a(n)}{a(t)} を大きくする事)です。高リターンの金融商品は、ドル・コスト平均法による投資成果を向上させます。積み立てている金融商品が有利かどうかは、よく点検すべきです。

積み立てた資産のリスク

ドル・コスト平均法で積み立てていると、投資金額が投資期間に比例して大きくなります。

投資金額が徐々に大きくなれば、資産額の値動きの大きさ(リスク)も大きくなります。そしていつの間にか投資家のリスク許容度を超える可能性があります。

そうならないように、ドル・コスト平均法で積み立てをしていたとしても、毎月の支払い金額のみに注目せず、資産全体の時価にも注目する事が大切です。

ドル・コスト平均法と定量購入との比較

ドル・コスト平均法と定量買い付けを比較すれば、平均取得価額の点では、ドル・コスト平均法が有利です。

各手法の平均取得価額

ドル・コスト平均法と定量購入の平均取得価格を算出します。積み立て資産の、時間 t における基準価額を a(t) として計算します。

項目 ドル・コスト平均法(定額購入) 定量購入(等株数投資や等口数投資)
買い方 月々 c 円ずつ n 回だけ積み立てる 月々 m 口ずつ n 回だけ積み立てる
支払い額 cn \Sigma a(t)m
取得口数 \Sigma \dfrac{c}{a(t)} mn
平均取得価額
(支払額÷取得口数)
\dfrac{cn}{\Sigma \dfrac{c}{a(t)}}=\dfrac{n}{\Sigma \dfrac{1}{a(t)}} …① \Sigma \dfrac{a(t)m}{mn}=\Sigma \dfrac{a(t)}{n} …②

ドル・コスト平均法と定量積み立てとの平均取得価額の比較

平均取得価額の観点において、ドル・コスト平均法が定量買い付けよりも有利である事を示します。

比較では、相加平均≧相乗平均 を使い、①≦②を示します。


 = \dfrac{1}{\dfrac{1}{n} \Sigma \dfrac{1}{a(t)}} \le \dfrac{1}{(\Pi \dfrac{1}{a(t)})^{\frac{1}{n}}} ←相加平均≧相乗平均 を分母で利用
= (\Pi a(t))^{\frac{1}{n}} \le \Sigma \dfrac{a(t)}{n} ←相加平均≧相乗平均
=

①≦②が言えました。

ドル・コスト平均法の平均取得価額は、定量買い付けの平均取得価額よりも「低い」もしくは「同じ」になります。そして平均取得価額が低いと、勝率が上がります。ドル・コスト平均法は定量積み立てよりも、勝ちやすい(勝率が高い)無難な投資手法だと言えます。

ドル・コスト平均法は、一方的な相場では不利

上記のドル・コスト平均法と定量買い付けとの比較で注意すべきは、平均取得価額にしか注目していない点です。現実の運用において投資成果・利益は、投資金額だけではなく、最終的な受け取り金額で決まります。そのため、平均取得価額のみへの注目は片手落ちです。

事実として例えば右肩上がり相場では、ドル・コスト平均法よりも等口数投資の方が有利な投資成果を獲得できます。なぜならドル・コスト平均法で買い付け金額を一定にするよりも、口数を一定にして投資金額を増やして行った方が、支払額こそ増えますがそれ以上に値上がり益を大きく享受できるために、有利になるわけです。

右肩下がりの相場でも、ドル・コスト平均法は傷口を広げやすい不利な手法へと変化します。

このように、一方的な相場ではドル・コスト平均法は不利になります。

ドル・コスト平均法のシミュレーション

ドル・コスト平均法の特性を考えるため、日経平均株価を毎月1万円ずつ買い付けた場合のシミュレーションを作成しました。1970年1月から2016年10月にかけての期間のバックテストです。

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横軸は積み立て開始時期です。

青線が各月の買い付け価格(=日経平均株価の月の始値/スケールは左軸)、赤線が積み立て開始時期別の平均取得価額(スケールは左軸)です。緑線が積み立て開始時期別の損益(スケールは右軸)です。

平均取得価額の動向

平均取得価額は、まるで現在の価格に引っ張られているかのように上下しています。ドル・コスト平均法を利用した際、積み立て資産の価格が安くなれば平均取得価額も下がり、高くなれば平均取得価額も上がります。時価で新規購入した分が、今までの積み立て分に加えられるために、平均取得価格は時価に近づく方向に動くのです。

また、動画からは投資時間が長くなるにつれて、平均取得価額が動きにくくなっていく様子も分かります。積み立て時間が長くなるにつれて、新規購入額が今までの積み立て資産の総額に比べて小さな比率となるために、平均取得価格は動きにくくなってきます。

損益の動向

積み立ての時間が長くなれば損益が大きく動く

現在の時価に対する損益の感応度は、積み立て時間が長くなればなるほど高くなります。つまり、積み立て投資を続けた場合、ハイリスクの状態になります。上記動画でも、積み立て開始時期が早ければ早いほど損益が大きく動くようになる様子を確認できます。

バブル序盤の積み立て開始が最も高値掴みになる

また、バブル相場のピークで積み立てを開始した人よりも、バブル相場の頭(序盤)で積み立てを開始した人の方が、高値掴みの額が大きくなり、損失が拡大しやすい傾向が分かります。バブル崩壊時に積み立てを開始すれば、比較的すぐに平均取得価格が下がりますが、バブル形成時での積み立て開始は、長らく高値で積み立てる事になり、バブル崩壊の影響を大きく受ける事になります。

積み立て投資では、バブルの崩壊時よりもバブル形成時の方が裏目に出るわけです。逆にこの事は、投資を開始するベストなタイミングを教えてくれます。資産運用を開始するにあたり、最も有利な時期は「不況の始まり」です。

ドル・コスト平均法に関連する投資手法

定量売却

定量売却は、一定の株数・口数ずつ売却する方法です。

定量売却を行えば、高値では多くの金額を受け取り、安値では少額を受け取る事になります。そのため、定額売却よりも平均売却金額の点で有利です。

ドル・コスト平均法が買いのテクニックであれば、定量売却は売りのテクニックです。

購入時は、定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入よりも平均取得価額が低いですが、その逆に売却時では、定量売却は定額売却よりも平均売却価格が高くなりやすいです。

ただし、定量売却で必ず平均売却価格が高くなるとは限りません。売却期間が異なる場合があり、値動きによっては定額売却の方が良いパターンも出てきます。

金買口売法

ドル・コスト平均法と定量売却を同時に行う方法です。

例えば3万円買って2万口を売却するという設定をするならば、3万円と2万口の差分を買い付ける事になります。

この手法では、ドル・コスト平均法の平均取得価額を低く抑える効果と、定量売却の高値で売れる効果の両方を享受できます。

逆張り性向が強くなりますので、勝率が上がります。その一方で、右肩上がり相場では積立額が一方的に減って行くために、機会損失に繋がります。

変則型ドル・コスト平均法

定額投資をベースにしつつ、場合によって積み立て額を変化させる方法です。

特に含み損時に追加で購入を行う事を指します。含み損時に追加購入すれば、平均取得価額が下がりやすくなるため、通常のドル・コスト平均法と比べて勝率が上がります。

ドル・バリュー平均法

ドル・バリュー平均法は、リスク資産が値上がりした際は少なめに買うか売却をし、値下がりした際は多く買う買い付け手法です。リスク資産額を一定の水準に保ちます。(この水準はバリューパスと呼ばれます。)

ドル・コスト平均法と比べ、逆張り性向が強くなりますので、勝率が上がります。

まとめ

ドル・コスト平均法は、株式や投資信託などの金融商品の購入手法の一つで、等金額での買い付け(すなわち定額購入)を繰り返す事を指します。安値で多くの株数(口数)を買い集める手法であり、この定額購入(ドル・コスト平均法)は定量購入(等株数投資や等口数投資)と比較して、平均取得価格を低く抑える効果があります。

ドル・コスト平均法は勝率が高い方法ではありますが、一方的な相場では不利になりやすい投資手法です。例えば右肩上がり相場では機会損失に繋がり、十分なリターンを享受できない事があります。右肩下がりの相場でも、傷口を広げやすくなります。

ドル・コスト平均法によるリターンを増やすには、「積み立て額を増やす」「積み立て回数を増やす」「有利な金融商品を買う」の3種類の方法があります。ただ、積み立てを続けた場合は資産の値動きが大きくなりますので、注意が必要です。

プロフィール 当サイト著者Kapokの自己紹介

当サイト「経済&マネー」のコンテンツを投稿している、私Kapokのプロフィールです。

著者の属性

ライフステージや周辺環境により、最適な資産運用の方法は変わります。下記の一覧は、サイト著者Kapokの属性です。

項目 属性 備考
生年(西暦) 1986年 資産形成を行う世代です。
出身地 山口県 瀬戸内の温暖な気候で育ちました。
性別 男性
文理 理系 理学系研究科出身
家族構成 独身 一人暮らし
棲家 賃貸(@東京都) 現在、不動産物件の購入予定はありません。古い所に住みたくないので、新し目(築30年未満)の賃貸物件を転々としたいと考えています。

著者の資産運用

投資歴

下記は、私の投資家としての履歴です。

年月 投資歴 備考
2007年12月 学生投資家として資産運用を開始 当時大学4年生。貯金100万円程度と父親からもらった30万円を元手に、学生投資家として活動を開始しました。
2008年中旬 ウォール街のランダム・ウォーカーを読む 重要な古典的投資教本を一読しました。
2008年9月 リーマン・ショックを経験 不況の相場と、含み損の拡大が続く局面を知りました。
2010年4月 社会人投資家として資産運用を継続 就職氷河期の中で就職し、サラリーマンになりました。
2012年3月 ケリー基準を知る 重要な資産管理の理論を学びました。
2012年12月〜 アベノミクスバブルを経験 どこまでも株価が上がっていく好況相場を知りました。結果、景気のサイクルの1周を経験した事になりました。

投資手法

私の運用手法です。

項目 内容 備考
投資対象 株式・債券・REIT・投資信託・金融派生商品等 株式個別銘柄への投資をメインに資産形成を行なっています。先物・オプションの取引や、信用売りを行う事もあります。
資金管理 複合型(裁量あり) 上昇相場ではコンスタント・ミックス型のアセット・アロケーション運用を行い、下落相場ではドル・バリュー平均法による逆張りを行います。下落後の上昇相場ではノーセルリバランスによりキャッシュを備蓄します。
ホームバイアス 強くかける(50%程度) 運用資産の50%を国内の資産で運用しています。
基本ポートフォリオ 低リスク資産30%
内需ディフェンシブ20%
リスク資産50%
低リスク資産比率は動的に変更し、不況の大底時に0%にする事を目論みます。内需ディフェンシブ株は、円高耐性によるポートフォリオ安定化のためにも重視します。
銘柄選定 ファンダメンタルズ指標の予測値と事業内容を重視 原則としてファンダメンタルズ指標の予測値を重視して銘柄を選定します。国内株は株主優待も加味し、必要ならば積極的に売買します。一方で外国株は事業内容が外部環境に合っているかどうかを重視し、バイ&ホールドを心がけています。
参考書籍 投資家が読むべき7冊の投資教本 私が影響を受けた投資教本をまとめました。

著作物

サイト著者Kapokが作成したwebコンテンツです。

項目 リンク 備考
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ホームページ Kapok&Fintech 自宅サーバーを構築し、情報発信しています。
投資ブログ 経済&マネー このブログです。資産運用に関する記事を投稿しています。
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芸術系ブログ Kapokのアートハウス 音楽作品や写真作品を投稿しています。
技術系ブログ Kapokの技術ブログ サーバー運用やプログラミングについての覚書です。

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私とコミュニケーションをとる方法は3種類あります。

項目 リンク 備考
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投資家が読むべき7冊の投資教本

私が今までに読んだ投資教本の中で、お薦めできる7冊を紹介します。


ウォール街のランダム・ウォーカー

1冊目はウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理です。

資産運用について包括的に学べる1冊です。大昔からある古典的投資教本とも言えます。ウォール街のランダム・ウォーカーは改訂を続け、出版され続けています。2016年12月現在の最新版は第11版ですが、私が読んだのは第9版でした。

最新版を読むのも良いです。ですが敢えて古い版を読む事で「時代が進んでも変わらず有効な投資手法」が見えてくるかも知れません。

 

金融工学入門

2冊目は金融工学入門です。

投資理論を扱うガチガチの書籍です。新書で買うと高額ですし、ページ数が多く読むのに時間がかかります。ですが、下手な投資教本を数冊読むのと比べれば得るものが多く、コスパも優れていると考えられます。なお、第2版が出ていますが、私は持っていません。

 

株の雑誌ZAiが作った「株」入門

3冊目は、めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ZAiが作った「株」入門 改訂第2版です。

雑誌っぽくチャラい感じがしますが、内容はちゃんとした投資教本です。

株の雑誌ZAiが作った「株」入門 上級編

ZAiの「株」入門には普通のものと上級編との2種類があります。両方読むべきです。

マーケットの魔術師 エッセンシャル版

5冊目はマーケットの魔術師 エッセンシャル版–投資で勝つ23の教えです。

読みやすく書かれていますが、投資哲学の重要な部分を知る事ができます。特に、上記の金融工学入門を読んだ後に読むと味が出る1冊です。

株価・為替が読めるチャート分析

6冊目は株価・為替が読めるチャート分析―決定版 (日経ビジネス人文庫 ブルー は 10-1)です。

チャートについての考え方を含め、掲載されています。チャートの読み方を知るために良い本です。

カオスで挑む金融市場

7冊目は、カオスで挑む金融市場―ないようで必ずある規則性を探る (ブルーバックス)です。

カオスというテーマを軸に、金融市場と経済についての分析を中心に記述された書籍です。1996年に第1刷が出された古い本ですが、だからこそ不滅の真理に近づけます。

株を売るタイミング いつ売るか?なぜ売るか?

株を売るタイミングについて投稿します。

「買った理由が消えた時」が売り時です。ファンダメンタルズ分析を重視していても、テクニカル分析を重視していても変わりません。

売りは重要な投資活動

株を売る事は重要です。

投資の利益は、「支払い金額」と「受け取り金額」の2つの要素で決まります。そのため、株を売り換金するタイミングは、株を買うタイミングと同様に、投資利益に対して決定的な影響があります。

買った理由が消えた時に売る

株を売るタイミングは、買った理由が消えた時と言われています。

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ファンダメンタルズを理由に買った場合

ファンダメンタルズを根拠に、「業績の水準と比べて株価が割安だ」と考えて株を買ったのであれば、株が割安でなくなったら売却をします。

株価が割安でなくなる要因は2つあります。

株価が上がったら売る

目論見通りに株価が値上がりし、割安さが解消されたのであれば、それが売り時です。

株価はファンダメンタルズで説明できない程高くなる事がありますが、多くの場合それは将来イナゴタワー(※1)を形成すると考えられます。一般的に、株価が割高だと考えられる時に売り抜ける事が推奨されます。

一方業績が予想以上に上方修正され、株価は上がったが依然として割安だと考えられるのであれば、目標株価を上げ、保有を続けても良いでしょう。

※1 イナゴタワー:タワーのような形状の株価チャートをイナゴタワーと呼びます。短期筋により大きく買われ暴騰し、その後に暴落する事で、イナゴタワーは形成されます。

下方修正で売る

株価はそのままだとしても、ファンダメンタルズが悪い方向に動いた時も、割安さが解消されます。例えば1株利益が下がればPERは上がります。

この時、買った理由が無くなるため損切りをすべきです。

業績の予想外の下方修正は、分析が間違っていた事を意味します。間違いが明らかになったタイミングで、投資プランに修正をかける事は大切な取り組みです。

テクニカル分析で買った場合

テクニカル分析で株を買ったのであれば、値動きに合わせて売却をします。

チャートが崩れたら売り

チャートを根拠に、上がると考えて株を買ったのであれば、チャートが崩れたら売却をします。

リバランス売り

ポートフォリオの資産配分を決め、メンテナンスをしているのであれば、「定期的」または「乖離が大きくなったタイミング」でリバランス売買を行います。

資産配分そのものを変更する際も、リバランス売買を行います。

なお、売却する際はリスク・リターンの変化やポートフォリオの他の資産との相関も考えておきます。

その他の売りのタイミング

他にもっと良い株がある

他に良い株が見つかった時は、保有株の売り時です。

今保有する金融商品が悪いものではないとしても、他にもっと良い金融商品があれば乗り換えて多くの利益を追求すべきです。

節税のため

節税効果がある場合は、保有株の売り時です。

含み損を持つ銘柄を売り、損益通算が出来る場合などは、損切りが投資家の総合的なパフォーマンスの改善に繋がります。

イベント要因

買収される時

保有株が買収される時は売り時です。

買収では巨大な買い手が現れます。そのため株価は多くの場合値上がりします。そのタイミングで売ってしまうのが良いと考えられます。

倒産した時

近い将来に株券が価値を失うと判明する事があります。その時が売り時です。

勿論、倒産時は売りが殺到し安値での損切りになりますが、それでも買い手がいるのであれば現金を回収します。

売却時に考慮すべき事

売却時に注意すべき事柄をまとめます。

売るか売らないか、迷ったら売る

迷ったら売るべき、だと考えます。

リスク資産のリターンは、リスクと比べて随分と小さな値になっています。専門家の中でも最適なアセット・アロケーションがバラバラで、共通の見解が存在しないのもこのためです。

そして平均リターンがリスクと比べて小さい事は、「値上がりした資産は売っておくのが良い」と示唆しています。

投資心理を考慮する

含み益の資産は売りやすく、含み損の資産は売りにくいです。

含み損の資産の損切りは、自身の投資判断の間違いを認める事になり、投資家にとって抵抗がある事が多いです。売る理由があれば、利益がある内に売りたいものです。

ただし、売る根拠は明確にしておく必要があります。投資家には「上昇銘柄を細かく利確」をし、「下落銘柄はまとめて損切り」をしてしまいやすくなる心理効果が働きます。この心理効果は、気質効果(disposition effect)と呼ばれています。

細かい利確は、利益を得る喜びを何度も味わえます。損切りをまとめれば、損失を出してしまった苦しみを味わう時間が減ります。ただし相場にはある程度のトレンドがあるため、気質効果のみに従った論理的根拠のない取引は、累積していけば損失に結びつきやすくなります。その点には注意が必要です。

売買手数料

売買の際には、証券会社へ売買手数料を支払う必要が出ます。手数料は積み重なれば多額となり、投資成績に悪影響します。売却益課税があれば、税金の支払いも必要になります。

売買を行う際に、手数料に注意すべきです。

ただし、手数料を気にしすぎて機会損失に繋がるのは避けなければなりません。実は税金も、最終的に多く支払った投資家の方が、投資家として成功しています。多く儲けているからです。

まとめ

この記事では株を売るタイミングについて記述しました。

「買った理由が消えた時」が売り時です。ファンダメンタルズ分析を重視していても、テクニカル分析を重視していても変わりません。

その他、「他にもっと良い株がある」「節税のため」「イベント要因」も売り時となります。

なお、売却時は心理効果や手数料等を考慮する事が望ましいです。

2リスク資産ポートフォリオの特性に学ぶ、資産選択で重要な事柄

2種類のリスク資産と無リスク資産があれば、それぞれの保有比率を調整する事で、投資家はさまざまなリスク・リターンのポートフォリオを構築できるようになります。

投資家は最も有利なポートフォリオを利用したいと考えますが、「値動きの相関係数」「無リスク資産の金利」「リスク」「リターン」等のパラメーターの状況や変化によって、資産の最適な組み入れ比率は変化するものです。

この記事では、2リスク資産ポートフォリオに限定して、パラメーターの変化が最適なポートフォリオにどう影響するかを論じます。その上で、更に一般的な資産運用で重視すべき事柄についてポイントをまとめます。

2リスク資産ポートフォリオの特性

2リスク資産ポートフォリオは、2つのリスク資産で構成されるポートフォリオです。各資産の組み入れ比率によって、ポートフォリオのリスク・リターンの値は変化します。

最適な組み入れ比率は、リスクの割にリターンが大きくなる比率です。それは、シャープレシオが最大となる点と言い換える事ができます。最適な比率を考えるためには、各パラメータの変化が最適比率にどう影響するかを知っておく事が不可欠です。

以下に、各種パラメータが変化した場合に、最適比率がどう変わるかを動画でまとめました。

相関係数が変化した時

リスク資産同士の相関係数は、最適な保有比率に大きく影響します。

下図はA資産(リスク20%,リターン5%)とB資産(リスク10%,リターン1%)の相関係数が変化した際の、最適な保有比率の変化を図示しています。

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図の確認方法

青の曲線は、2リスク資産のみを保有し、保有比率を変化させた時に実現できるリスク・リターンの組み合わせです。赤の直線は、2リスク資産と無リスク資産を利用して実現可能な最も有利なリスク・リターンの組み合わせで、資本市場線と呼ばれる直線です。

相関係数の変化による最適資産配分の変化

相関係数が大きい(1に近い)時は、低リスク・高リターンな方の金融商品を多く持つべきです。上図では相関係数が0.3までは、A資産だけを持つ(A資産100%保有)が最適でした。

一方で相関係数が小さくなる(-1に近くなる)にしたがって、B資産を組み入れた方が良いように変わってきます。資産同士の値動きの相関が小さい時や、逆相関の関係がある時は、不利な金融商品(高リスク・低リターンな金融商品)を多少組み入れた方が有利に運用できます。リスク分散の効果が大きくなるからです。

逆相関資産の組み入れが重要

2リスク資産の場合に限らず、一般的なポートフォリオ構築においても、他の資産との相関が低い金融商品を組み入れる事で、投資家は有利なリスク・リターンの組み合わせを手に入れられます。多くの資産の値動きと逆相関がある資産を組み入れれば、リバランスを通して運用資産の成長に貢献します。

無リスク資産の金利が変化した時

無リスク資産の金利も、最適な保有比率に影響します。

下図は、無リスク資産の金利を-1.5%から3.0%まで変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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金利上昇で高リスク資産選好

金利が上昇するに従って、高リスク・高リターンであるA資産の組み入れ比率が増える事が分かります。

金利変化への対応

一般的な金利上昇局面でも、投資マネーはリスクを取ってでも高リターンな金融商品に向かいます。一方で低リターンな金融商品は、金利上昇局面では売られやすくなります。

逆に金利下落局面では、低リターンな金融商品の組入れで有利な運用できるようになります。そのため、場合によってはマイナス金利の中でさえ、債券が更に買われる事があります。

リスクが変化した時

リスクの変化は、保有比率に影響します。

下図は、A資産のリスクを変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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リスク大→最適組み入れ比率が小さく

A資産のリスクが大きくなるにしたがって、A資産の最適保有比率は小さくなります。リスクを避けたほうが有利な運用ができるからです。

リスクの大小と最適組み入れ比率

一般的なポートフォリオ構築においても、(他の条件が同じであれば)リスクが大きな金融商品は少なめに、リスクが小さな金融商品は多めに持つのが望ましい選択です。

リターンが変化した時

リターンの変化は、保有比率に影響します。

下図は、A資産のリターンを変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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リターン大→最適組み入れ比率が大きく

A資産のリターンが大きくなるにしたがって、A資産の最適保有比率は大きくなります。

リターンの大きな資産を多く保有する事

一般的なポートフォリオ構築においても、リターンが大きな金融商品を多く持つ事は大切です。

まとめ

2リスク資産ポートフォリオの特性から、一般的なポートフォリオ構築において大切な事柄が分かりました。

ポートフォリオ構築の際は、「他の資産との相関が低い資産を組み入れる」「金利の変化に対応する」「リスクの小さな金融商品を多く組み入れる」「リターンの大きな金融商品を多く組み入れる」という事が大切です。

実際にはこの4つのポイントは、矛盾して同時には成立できないかも知れません。現実的にはこれらのバランスを取りながら運用していく事になります。