個別株運用の配当課税を避け、複利効果を強めるために内部再投資型インデックス投信を使うのはどうか?

個別株運用では、節税対策をしない場合は、配当課税が徴収されます。このため、内部再投資型のインデックス投資信託と比べて運用コストが割高になる事があります。

一方で、売買益に対する課税は、投資信託の方が割高です。これを踏まえた最終的なリターンは、コストの視点でのみ比較した限りで、結局は個別株運用の方が有利だと言えます。

運用コストとトータルリターン

個別株運用と比べ、内部再投資型インデックス投資信託は、運用コストが低め

個別株運用では、配当金に課税されるために、運用コストが高くなる場合があります。節税対策をしなかった際に、例えば配当金が年利2%であれば、2%×20%=0.4%が課税されます。

この課税を避けるために、内部再投資型インデックス投信を利用するという提案があります。信託報酬を含む運用コストが0.4%を下回っていれば、例えば0.35%程度であれば、運用コストはインデックス投信の方が低くなります。

その場合は、運用コストが低い事に起因して、個別株運用と比べて、多くの複利効果を享受できます。

 

最後の課税額は個別株運用の方が少ない

内部再投資型は配当課税が減る一方で、内部再投資した分だけ、基準価額が上がります。このため最後売却時には、売買益に関する課税額が大きくなります。

このように、内部再投資型インデックス投信は、運用コストこそ低いものの、売却時の課税額が大きくなります。つまり個別株と内部再投資型投信利用のコストは一長一短です。

どちらがトータルリターンが大きくなるでしょうか。シミュレーションをしてみます。

 

シミュレーション

配当課税後再投資と、内部再投資型投資信託のトータルリターン比較

もとの金融商品は、配当利回り2%で値動きは小さいとします。売買コストも小さいと仮定します。

個別株では、配当金は20%課税された後、再投資され複利的に運用されます。一方で、内部再投資型投資信託では、0.35%の信託報酬控除後に、非課税で投信の内部で再投資されるとします。

最終的な運用益にかかる税率は20%とします。下図は結果です。読み方は後述します。

配当課税後再投資と、信託報酬控除後内部再投資

2グラフとも、横軸は運用年数です。

 

上のグラフ

縦軸は最終的な資産総額です。***が個別株運用、曲線が再投資型投資信託利用です。

個別株運用の方が、運用コストは高いものの、信託報酬がかからなく、運用益に対する課税を回避できる事から、よい投資成果を得られています。

一方で投資信託では、運用コストが低く多くの複利効果が得られているものの、最終的には売買益にかかる税負担の多さや、信託報酬の負担から、個別株運用と比べてパフォーマンスを落としています。

下のグラフ

どちらがどの程度資産総額を増やしたかについての比率です。分母が再投資型投資信託、分子が個別株です。この設定では、50年後に10%弱、個別株の運用成績が良くなっています。

 

パラメータ依存性

このシミュレーションでは、コスト比較の観点では個別株の方が有利でした。とはいえ、パラメータが変わると有利不利は逆転する事もあります。

いくつか紹介します。

運用年数

運用年数が極端に長い場合は、内部再投資型投資信託の方が有利になります。低い運用コストの複利効果が大きくなるためです。この設定では、400年後ではまだ個別株が有利ですが、500年後は投資信託の方が有利に変わります。

配当利回り

配当利回りが大きくなるにつれ、個別株運用は不利に変わります。配当課税が増え、得られる複利効果が減るためです。

信託報酬

信託報酬が低くなるにつれ、個別株運用は不利に変わります。投資信託の方が、非課税で再投資するため複利効果が大きいためです。

元の金融商品の値動き

シミュレーションでは一定としていますが、高成長資産になるにつれて、個別株運用は少し不利になります。配当課税による複利効果の縮小の影響を受けやすくなるためです。

 

現実問題として

節税対策

今回節税対策ができない場合を考えましたが、NISAの利用や、損益通算等、節税対策が出来る場合があります。その場合はもちろん、個別株運用が投信利用と比べて、信託報酬を支払わない分だけ有利です。

 

投資信託は、非課税で内部再投資できない場合あり

投資信託は必ずしも非課税で内部再投資できるとは限りません。分配金が出てしまえば配当課税と複利効果は個別株と大差なくなります。結果、信託報酬の分だけ高コストになります。

また投資対象によっては、投資信託内でも課税後に再投資されるものもあります。この場合も複利効果が個別株と同様のため、信託報酬の分だけ高コストになります。

 

まとめ

想定しているパラメーターにもよりますが、総合的なコストの観点で、個別株運用は内部再投資型投資信託よりも有利です。配当課税が多くかかりますが、それよりも信託報酬不要で、売買益課税が小さいというメリットが大きいためです。

 

参考

関連記事

インデックス投資のデメリット(メリット風のまとめ)は、コストについての言及が含まれます。コメント欄でもいくつかの指摘があります。

 

シミュレーションのPAWマクロ

このプロット作成に使ったマクロです。パラメーターを変更して試す事が可能です。

 

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個別株運用の配当課税を避け、複利効果を強めるために内部再投資型インデックス投信を使うのはどうか?” への1件のコメント
  1. ニシ より:

    お世話になっております。

    市場が一方的に上昇する局面ではそうですが、乱高下を想定していません。
    実運用上は上がったり下がったりするのが問題です。

    節税対策をしない場合において、投資信託は配当分には課税されないものの(仮に分配金が出ても特別分配となり非課税)、個別株は含み損下でも課税されます。

  2. Kapok より:

    > ニシさん

    乱高下でかつ、節税対策無しの場合も、良いか悪いかは結局相場次第でしょうね。

    下げた際に特別分配が出ると取得価額が下がるため、最後売却時の課税額が大きくなりやすいです。上がって下がると複利効果がマイナス値になり、先に配当課税を支払う方が有利です。

  3. ニシ より:

    難しいところです。

    個別株の運用を否定したりはしませんが、どっちが税制上お得か損かという問題では多少維持コストがかかっても、低コスト投資信託の税制のほうがお得であるとは思っています。
    資産形成の段階では、大きな額を一括で投資もできませんしね。
    多くのサラリーマンにとっては積立投資をメインスタイルとするので。

    ただ私はインデックス投資自体を最良だとは思っていませんので、個別株でα値を取れる方はどんどん狙っていってください。

    • Kapok より:

      > ニシさん

      中長期投資であれば、積立でも一括でも、αがどうであろうと、「信託報酬を支払う事は、支払わない場合と比べてコストの面では不利になりやすい」と私は考えます。

  4. オジサン より:

    個別株の配当を最終的にどう合計しているのでしょう。
    もし、それを生活費に使わなければならないなら、投信の場合も解約して同じ額を生活費に使わなければならないでしょう。すると課税が生じます。
    もし、配当を消費に回さず、新たな投資に回すならその運用益には最終的に税がかかります。その運用益と税をどう考えるのでしょう。
    ざっと考えると、前者の場合は、信託報酬投信が不利で、後者の場合は、信託報酬が安ければ税の繰り延べ分、投信が有利になり易いと言えるでしょう。

    • Kapok より:

      >> 個別株の配当を最終的にどう合計しているのでしょう。

      個別株では、配当金は20%課税された後、再投資され複利的に運用される想定でシミュレーションしています。

      >> ざっと考えると、前者の場合は、信託報酬投信が不利で、後者の場合は、信託報酬が安ければ税の繰り延べ分、投信が有利になり易いと言えるでしょう。

      そうですね。ただ、後者の場合であっても、投信が不利になりやすいかも知れません。もちろんパラメータ次第ではありますが、信託報酬の支払いの影響が意外と大きく、税の支払いを後回しにした程度ではカバーできない事が多そうです。

      とはいえ、この記事を書いた2015年と比べて、今はもっと信託報酬が安い複利運用型インデックスファンドが出ていますので、今後はどっちが有利か分からなくなりますね。

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