リスクの取り過ぎは投資成果にどのように影響するか? レバレッジ運用はほどほどに?


極端なレバレッジ運用等に起因するリスクの取り過ぎは、投資の勝率を引き下げる事で、投資成果に悪影響します。その様子を乱数シミュレーションで示しました。紹介します。

レバレッジ運用

少ない資本金で大きな取引をする事をレバレッジ運用と呼びます。

例えば四半期でリターン1%・リスク10%の金融商品があったとします。この金融商品を使った運用では理論上、2倍のレバレッジをかけると、リターン2%・リスク20%となり、3倍のレバレッジではリターン3%・リスク30%が実現します。

このようにレバレッジはリターンの期待値を引き上げます。一見すると素晴らしい仕組みです。ところがレバレッジをかけた運用は、リスクが大きくなった事で勝率が下がり、投資成果が期待できなくなります。

シミュレーション

下図は乱数シミュレーションです。リスク・リターン別に、リスク資産のリターン分布がどのように経時変化するかをプロットしました。

青:リターン1%(年利4%) リスク10%
緑:リターン2%(年利8%) リスク20%
赤:リターン3%(年利12%) リスク30%

横軸はリターン(倍)です。tは経った時間を示します。

高リスク運用で平均リターンは確かに上がる

プラスリターンの金融商品にレバレッジをかけ、高リスク運用すると、確かに平均リターンは大きくなります。シミュレーションでも平均値(Mean)は上がっています。

時間が経った箇所ではヒストグラムに収まらなくなってしまい正しい平均値が出ていませんが、実際には高いリスクは高い平均リターンを生み出します。この現象は、高リスク投資では大勝ちした少数の投資家が、全投資家のリターンの平均値を上方に牽引するために起こります。

高リスク運用では負けやすくなる

高リスクで資産運用を続けると、負けやすくなります。シミュレーションでも、最もリスクの高い赤線のグループが最も敗者が多く、緑、青はこの順に極端な敗者が少なくなっています。

高リスク投資では負けている投資家は負け続け、死屍累々となります。あっという間に負けます。そして一度負けた投資家が平均値へ復活する確率は極めて小さく、負ける投資家は増え続けます。

高リスク投資で大勝ちした少数の投資家の背後には、多数の負組投資家がいるのです。シミュレーションにおいて、年利12%に惹かれた赤組投資家の多くが、元本を半分以下に減らす様子は目に焼き付けておいて損はありません。

無難な運用をしたいのであれば、レバレッジをかけず、リスクを抑えた運用を行うのが良いでしょう。

まとめ

レバレッジ運用等による高リスクな運用を行えば、リターンの期待値が上がります。ところがそれは、一部の大勝投資家が期待値を引き上げただけであり、多くの投資家は負けて元本を失います。このようにリスクの取り過ぎは、投資の勝率を引き下げる事で、投資成果に悪影響します。無難な運用をしたいのであれば、レバレッジをかけず、リスクを抑えた資産運用を行うのが良いでしょう。

シミュレーションのソースコード

私個人の覚書を兼ね、コードを掲載しておきます。ROOTのgRandom->Gaus関数で乱数を生成し、coutで各人の資産推移を取得(ファイル名aaa.txtは1倍 bbb.txtが2倍 ccc.txtが3倍レバレッジ)、PAWマクロでプロットしました。

長期投資でリスクは減らない リスクはどう経時変化するか?何故「リスクが減る」という主張に騙されるのか?


長期投資でリスクが低減するという金融商品のセールストークがありますが、それは誤りです。運用期間が長くなるにしたがって、リスクは増える性質があります。

リスクがどのように増えるのかを、乱数シミュレーションによる動画を用いて説明します。

リスクとは?

資産運用の用語としてのリスクは、値動きの大きさを意味します。

例えばハイリスクな金融商品とは、大きく値上がりする可能性がある反面、大きく下落する可能性もある金融商品を指します。リスクは必ずしも価格下落の可能性を示す単語ではなく、値動きの大きさを示す指標として利用されます。

リスクはリターン分布の標準偏差で定量的に評価されます。多くの場合、リターン分布は過去の実績から取得します。そして今後もそのような値動きをするだろうと仮定し、将来の値動きの大きさの程度を推定する事になります。

リスク資産の長期保有シミュレーション

金融商品のパラメータ

シミュレーションでは、年間のリスクが20%、平均リターンが4%の金融商品を考えます。このリスク・リターンは、比較的強気な投資家が日本株の値動き特性として期待する値です。

この年間リスク・リターンは、四半期ではリスクは10%程度、リターンは1%程度に相当します。四半期ごとに値動きを観測し、4年間経過するまでのリターン分布を作成しました。

リターン分布の経時変化

動画は2種類です。上図は縦軸一定にした分布の広がり方を確認するため、下図は縦軸を調整しながら分布そのものの様子の詳細を確認するための資料です。横軸はリターンです。

最初の四半期でリターン分布は10%程度の広がりを持ち、時間の経過とともにリターン分布が拡大する様子を確認できます。下図右上のパラメータのmeanはリターンの平均値、RMSはroot mean squareの略で確率変数を二乗した値の平均値の平方根です。このRMSを資産運用におけるリスク値と考えて構いません。

リスクは増え続ける

シミュレーションから明らかなように、時間が経つにしたがってリターン分布は広がり続けます。RMSの値も一方的に大きくなります。長期投資では、リスクは拡大するのです。

時間が経つにつれ、相場が良い時は、増えた資産を元手にもっと多くの利益が出ます。逆に下落相場では資産が毀損し、将来の上昇相場のリターンの元手を失う事で損失が拡大します。このようなメカニズムで、リターン分布は時間とともに広がり続け、リスクは増大し続けます。長期投資でリスクが減る事はありません。

平均リターンがたとえプラスでも、多くの投資家は儲けられない

シミュレーションは、金融商品の平均リターンがプラスといえど、多くの投資家が損をする事がある事を示しています。時間推移を見れば、Mean(平均)の値は確かに増え続けています。にもかからず、(4倍以上に資産を増やす可能性がある一方で、)資産を減らすパターンが多く散見されます。

長期的なリターンは、リターンの平均値に近づくという主張がありますが、これは誤りです。負けている投資家は負け続けます。多くの投資家は負けて元本を失い、平均値に戻れなくなくなります。この性質は逆正弦定理という名前で広く知られています。

「長期投資でリスクが減る」という主張は何が間違っているか

ここまで読めば、長期投資でリスクが減らない事は明らかでしょう。では世間一般の「長期投資でリスクが減る」という主張は何が誤りなのでしょうか。

多くの場合、それらの誤った主張は「1年あたりのリスク」を提示します。「1年あたりのリスク」は「リスク」とは異なる概念です。そして長期投資家の興味は、長期運用におけるリスクであり、リターンである事を考慮すれば、「1年あたりのリスク」は役立たない、無意味な指標です。にもかかわらず、結論部分の「長期投資で報われる」という甘言は魅力的ですので、長期投資でリスクが減るという考えは誤りにもかかわらず、広く支持されています。

シミュレーションのソースコード

私個人の覚書を兼ね、コードを掲載しておきます。ROOTのgRandom->Gaus関数で乱数生成し、coutで取得、PAWマクロでプロットしました。

2リスク資産ポートフォリオの特性に学ぶ、資産選択で重要な事柄


2種類のリスク資産と無リスク資産があれば、それぞれの保有比率を調整する事で、投資家はさまざまなリスク・リターンのポートフォリオを構築できるようになります。

投資家は最も有利なポートフォリオを利用したいと考えますが、「値動きの相関係数」「無リスク資産の金利」「リスク」「リターン」等のパラメーターの状況や変化によって、資産の最適な組み入れ比率は変化するものです。

この記事では、2リスク資産ポートフォリオに限定して、パラメーターの変化が最適なポートフォリオにどう影響するかを論じます。その上で、更に一般的な資産運用で重視すべき事柄についてポイントをまとめます。

2リスク資産ポートフォリオの特性

2リスク資産ポートフォリオは、2つのリスク資産で構成されるポートフォリオです。各資産の組み入れ比率によって、ポートフォリオのリスク・リターンの値は変化します。

最適な組み入れ比率は、リスクの割にリターンが大きくなる比率です。それは、シャープレシオが最大となる点と言い換える事ができます。最適な比率を考えるためには、各パラメータの変化が最適比率にどう影響するかを知っておく事が不可欠です。

以下に、各種パラメータが変化した場合に、最適比率がどう変わるかを動画でまとめました。

相関係数が変化した時

リスク資産同士の相関係数は、最適な保有比率に大きく影響します。

下図はA資産(リスク20%,リターン5%)とB資産(リスク10%,リターン1%)の相関係数が変化した際の、最適な保有比率の変化を図示しています。

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図の確認方法

青の曲線は、2リスク資産のみを保有し、保有比率を変化させた時に実現できるリスク・リターンの組み合わせです。赤の直線は、2リスク資産と無リスク資産を利用して実現可能な最も有利なリスク・リターンの組み合わせで、資本市場線と呼ばれる直線です。

相関係数の変化による最適資産配分の変化

相関係数が大きい(1に近い)時は、低リスク・高リターンな方の金融商品を多く持つべきです。上図では相関係数が0.3までは、A資産だけを持つ(A資産100%保有)が最適でした。

一方で相関係数が小さくなる(-1に近くなる)にしたがって、B資産を組み入れた方が良いように変わってきます。資産同士の値動きの相関が小さい時や、逆相関の関係がある時は、不利な金融商品(高リスク・低リターンな金融商品)を多少組み入れた方が有利に運用できます。リスク分散の効果が大きくなるからです。

逆相関資産の組み入れが重要

2リスク資産の場合に限らず、一般的なポートフォリオ構築においても、他の資産との相関が低い金融商品を組み入れる事で、投資家は有利なリスク・リターンの組み合わせを手に入れられます。多くの資産の値動きと逆相関がある資産を組み入れれば、リバランスを通して運用資産の成長に貢献します。

無リスク資産の金利が変化した時

無リスク資産の金利も、最適な保有比率に影響します。

下図は、無リスク資産の金利を-1.5%から3.0%まで変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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金利上昇で高リスク資産選好

金利が上昇するに従って、高リスク・高リターンであるA資産の組み入れ比率が増える事が分かります。

金利変化への対応

一般的な金利上昇局面でも、投資マネーはリスクを取ってでも高リターンな金融商品に向かいます。一方で低リターンな金融商品は、金利上昇局面では売られやすくなります。

逆に金利下落局面では、低リターンな金融商品の組入れで有利な運用できるようになります。そのため、場合によってはマイナス金利の中でさえ、債券が更に買われる事があります。

リスクが変化した時

リスクの変化は、保有比率に影響します。

下図は、A資産のリスクを変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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リスク大→最適組み入れ比率が小さく

A資産のリスクが大きくなるにしたがって、A資産の最適保有比率は小さくなります。リスクを避けたほうが有利な運用ができるからです。

リスクの大小と最適組み入れ比率

一般的なポートフォリオ構築においても、(他の条件が同じであれば)リスクが大きな金融商品は少なめに、リスクが小さな金融商品は多めに持つのが望ましい選択です。

リターンが変化した時

リターンの変化は、保有比率に影響します。

下図は、A資産のリターンを変化させた時の、A資産の最適保有比率の変化です。

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リターン大→最適組み入れ比率が大きく

A資産のリターンが大きくなるにしたがって、A資産の最適保有比率は大きくなります。

リターンの大きな資産を多く保有する事

一般的なポートフォリオ構築においても、リターンが大きな金融商品を多く持つ事は大切です。

まとめ

2リスク資産ポートフォリオの特性から、一般的なポートフォリオ構築において大切な事柄が分かりました。

ポートフォリオ構築の際は、「他の資産との相関が低い資産を組み入れる」「金利の変化に対応する」「リスクの小さな金融商品を多く組み入れる」「リターンの大きな金融商品を多く組み入れる」という事が大切です。

実際にはこの4つのポイントは、矛盾して同時には成立できないかも知れません。現実的にはこれらのバランスを取りながら運用していく事になります。