バイ&ホールド(Buy&Hold) 何もしないという選択の大きな効果


バイ&ホールド(Buy&Hold)は投資手法の1つで、「投資家が(株式等の)有価証券を買い、長期にわたり持ち続ける事」を指します。この「何もしない」という選択の効果について投稿します。

バイ&ホールドの効果

相場に乗れる

バイ&ホールドでは、勢いのある値上がりした資産を、高い比率で持つ事になります。逆に下落している落ち目の資産の保有比率は、自動的に小さくなります。

詳細はコンスタントミックスとの比較の所で後述しますが、このように相場に乗れる点は、バイ&ホールドのメリットです。

低コストで有利

バイ&ホールドは、売買回数が最小限で済むため、売買手数料を抑制できます。この手数料の減少により、頻繁に売買を行うよりも投資パフォーマンスを向上させる効果が期待できます。

コンスタントミックスとの比較

バイ&ホールドの比較対象は、コンスタントミックスです。

コンスタントミックスとは?

コンスタントミックスは、各資産の比率を一定に保つ手法で、高くなった資産を売り、安くなった資産を買います。資産比率を保つための売買はリバランスと呼ばれます。

比較例① 上昇相場

下図は、上がったり下がったりしながら上がる資産である「A資産」と、無リスク資産である「B資産」を用いた資産運用の比較です。バイ&ホールドした場合が左で、リバランスしながら比率を保った場合が右になります。

buyandholdvs_cm

この例では、バイ&ホールド(B&H)の方が、コンスタントミックス(CM)よりも良い成績になりました。

コンスタントミックス(CM)では、A資産が上がった時に利益確定をし、B資産を買いました。ところがA資産は最終的に更に値上がりしたため、利益確定した分だけ値上がり益を享受できなくなりました。

一方でバイ&ホールド(B&H)では、A資産の利益を確定せず、A資産を持ち続けた事によって、更なる上昇を享受できました。時間が経つにつれ、ポートフォリオにおけるA資産の比率が増え、A資産の成長の効果をより多く得られるようになって来る点も注目に値します。

比較例② 下落相場

今度はA資産が上がったり下がったりしながら下落する相場での比較です。

buyandholdvs_cm3

この例でも、バイ&ホールド(B&H)の方が、コンスタントミックス(CM)よりも良い成績になりました。

コンスタントミックス(CM)では、A資産が下がった時に押し目買いをし、A資産を買い増しました。ところがA資産は最終的に更に値下がりしたため、このリバランス買いは傷口を広げる結果となりました。

一方でバイ&ホールド(B&H)では、B資産を手堅く持ち続けた事によって、A資産の値下がりの被害を最小限に抑える事が出来ました。時間が経つにつれ、ポートフォリオにおけるA資産の比率が減り、被害の影響が小さくなって来る点も注目に値します。

比較の教訓

バイ&ホールドは下手にリバランスするよりも好成績

上記の比較の通り、バイ&ホールドは、下手にリバランスする場合と比べて好成績となります。

バイ&ホールドは、売買手数料が少なく低コストな運用手法である事も忘れられません。特に効率的市場仮説を信じている投資家にとっては、何もしないでじっとしているという選択は合理的です。

このようにバイ&ホールドは、下手な資産配分を保ちリバランスを繰り返すのと比べて有利な手法だと言えます。

バイ&ホールドは一方的な相場で強い

バイ&ホールドは、特に一方的な相場で強いという性質を持っています。

この事から、バイ&ホールドは「パッシブ」かつ「順張り」の手法であると言われています。

市場にはトレンドがあり、株価はブラウン運動とは異なる様相を呈します。バイ&ホールドは、トレンドを享受するのに良い手法であると言えます。

余談:真の最強はコンスタントミックス

ここからは余談です。

この記事ではバイ&ホールドの良さをまとめましたが、取得したパラメーターの精度が高い場合は、「コンスタントミックスとリバランス」の優位性が強く出るようになります。

具体例:上昇相場の場合

上記の上昇相場の場合は、A資産に4倍のレバレッジをかけ、勝てば売り、負ければ買うというリバランスを繰り返すのが資産の成長に最良です。バイ&ホールドで持っている場合と比べて、良い投資成果を得られます。

レバレッジが4倍を超えればリスク過多で、負けた時に元手を失い儲けられません。4倍より小さければ勝った時のリターンが小さくなってしまいます。4倍が良いのです。この値は、対数最適戦略の計算から導出します。

現実的な資産運用に向けて

投資の実践的には、正確なパラメータを事前に取得する事は難しく、最適なポートフォリオの構築と正しいリバランスは困難です。

それよりも、むしろ心がけとして、「売買(リバランスを含む)を行う際は、バイ&ホールドに対する優位性について考える」のが良いかも知れません。

なお、リバランスを行う場合も、頻度は1年から3年に1度程度の低頻度が良い、という分析があります。

リバランス 資産配分のメンテナンスの手法とその効果とは?

リバランス 資産配分のメンテナンスの手法とその効果とは?


資産運用において、資産配分のメンテナンス手法であるリバランスの方法と効果についてまとめます。

リバランスとは?

資産運用において、資産配分を再調整(バランスを取りなおす)するために行う売買をリバランスと呼びます。通常のリバランスでは、値上がりによって構成比率が上がった資産を売却し、値下がりによって構成比率が下がった資産を買い付けます。

資産配分の経時変化とリバランス

目標とするポートフォリオや資産配分(アセット・アロケーション)があったとします。最初、目標とする資産配分で買い付けたとしても、時間が経つとともに、各資産は値上がりや値下がりをするため、資産のバランスは崩れていきます。

こうして経時変化により崩れた資産配分のバランスを、元の配分に戻す売買がリバランスです。リバランスでは、高くなった資産を売り、安くなった資産を買い増します。

リバランスの具体例

下記の動画は、リバランス売買について図示しています。

rebalance

例えば目標とする資産配分は、A,B,C,Dの各資産を25%ずつ保有する事とします。ところが時間が経ち、各資産の値上がり、または、値下がりにより、当初のバランスが崩れました。リバランスでは、B,Cの資産を売却し、A,Dの資産を買い増します。この売買を通して、資産配分を元に戻します。

リバランスの過程

リバランスは、下記の4つの過程で行われます。

資産配分を決める

まずは、目標とする資産配分を決めます。

資産配分の決定と運用の手法は、後述する通り多くの種類があります。資産配分は固定しても良いですし、動的なものでも良いです。

伝統的な資産運用手法では、資産配分は固定するものだという考えが浸透しています。

値動きを記録する

将来比較するために、資産配分を記録します。

各資産をどの程度保有しているのか、値動きはどの程度の大きさなのか、等の情報は、リバランスの必要性の検証時に使う事があります。

比較する

現在の資産配分と、目標とする資産配分とを比較します。そして、リバランスが必要かどうかを検証します。

目標と比べ、ポートフォリオのリスクが過多・過小であるポートフォリオは、リバランスの対象です。

修正する

リバランスが必要だと判断すれば、リバランスを行います。

ポートフォリオに、目標の比率よりも多く組み入れられている資産を売却し、目標の比率よりも少ない資産を買い増します。

リバランスの効果

リバランスで投資成果の向上を期待できます。

安値買い・高値売りの実践

リバランスによる売買では、高くなった資産を売り、安くなった資産を買う事になります。

これは「安く買って高く売る」という投資成功のための売買の実践です。そのため適切なリバランスは、投資成績を向上させます。

長期的な運用をする場合、値上がりした資産は少しは売らなければなりません。値上がりした資産を持ち続ける事は、その資産への掛け金を増やす事を意味しており、値下がりした際の傷口を広げる原因になるからです。

同様に、値下がりした資産は掛け金が減っている事を意味します。今後の値上がり益の享受のために、少し買い増さなければなりません。

元本確保

また、リバランスで高くなった資産を売れば、投資元本の確保に繋がります。

投資家にとって投資元本は大切です。たとえ暴落相場に出くわし、資産の一部が毀損したとしても、元本が確保されているのであれば、投資家は再起が可能になります。

資産成長の理論

適切なリバランスは、上記の通り安値買い・高値売りに繋がり、元本確保から成長性を高めます。そのため、リバランスは資産を増やすのに有効です。そして、リスク資産をただ持つだけの場合と比べ、良い投資成果を得られる事があります。

リバランスで資産が成長する例

極端な例ですが、2分の1の確率で株価が2倍になり、2分の1の確率で株価が半分になる銘柄があったとします。この銘柄をただ持っているだけの場合は、長期的には上がったり下がったりするだけで、大きな利益を期待できません。

ところが無リスク資産を50%組み入れ、リバランスを繰り返せば平均すると2期間で9/8倍(112.5%)ずつの成長が期待できます。

下図は、この株式を用いたリバランスのシミュレーション結果です。金融工学ノート 4 ポートフォリオ成長の最適化と LOPF 理論(http://www.geocities.jp/ktwr0/kinyu/FE_4.pdf)の2ページ目からの引用でしたが、現在はリンク切れになっています。

LOPFRebalance_FE_4P2
↑株式を保有する場合(青)と比べ、適切なポートフォリオでリバランスを繰り返す場合(赤)の方が良いパフォーマンスを示しています。

リバランスで成長性が高まる理由

上記の例において、リバランスを繰り返す方がパフォーマンスが良くなる事は、計算から導く事ができます。

保有資産の\alphaを株で、1-\alphaを無リスク資産で持った際、株価が上がった時のリターンR_{+}と、株価が下がった時のリターンR_{-}を考えます。

R_{+}=1+\alpha , R_{-}=1 - \frac{1}{2} \alpha
R_{+}R_{-}=\frac{9}{8}-\frac{1}{2}(\alpha-\frac{1}{2})^{2}
この事から、\alpha=\frac{1}{2}で成長性が最も高まる事を導けます。

より一般的には、投資家は対数最適化戦略(リターンの対数をとって確率で重み付けしたパラメータを最大化する戦略)を用いて、期待成長率の最大化を目指します。資産の期待成長率を高め最適化する方法は、上記LOPF理論についてのノートの他は、ケリー基準(¥∞)http://www.geocities.jp/y_infty/management/index.html が詳しかったのですが、現在はリンク切れとなっています。

リバランスのタイミング

定期的なリバランス

半年に1回、1年に1回、3年に1回等、定期的にリバランスをする方法があります。

定期的なリバランスの頻度は、あまり頻繁でない方が良いとされます。頻繁なリバランスはマーケットのトレンド(上昇トレンドや下落トレンド)に逆らう事になりますし、手数料も多くかかるため、投資パフォーマンスの悪化に繋がります。そのため、適度に「ほったらかす」事は有効です。具体的には、3年に1回程度のリバランスがパフォーマンスが良いというデータもあります。

世界標準の投資法 その2 ~投資したら、定期的に当初の資産配分に戻す(わたしのインデックス)でのバックテスト(下図)によれば、定期リバランスの中では「3年毎のリバランス」の成績が良く、分析期間では年率6.5%程度あります。これは毎月リバランスと比べて0.8%程度良い値です。

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↑1979年3月から2009年2月にかけての30年間のデータを用いた検証です。サイト「わたしのインデックス」から取得しました。毎月リバランス等、頻繁なリバランスはリターンを下げている様子が図示されています。

資産は短期的にはトレンドを持ち、ひとつの方向に向かいやすい傾向があります。このため頻繁なリバランスは、安くなって買い増しした資産が更に下がる・高くなって売った資産が更に上がり機会損失を被る、等のデメリットを招きます。頻繁なリバランスを避け、年単位でバランスを確認するのも良いでしょう。

乖離が大きくなった場合にリバランス

目標からの乖離が大きくなった際にリバランスをする方法があります。

リバランスを行う目安とする、資産配分の乖離の程度は、一概には決められません。リスク許容度が小さければ、リスクが大きくなったらすぐにリバランスをします。逆に売買手数料が割高である環境では、大きな乖離もある程度許容し、売買を控えた方がパフォーマンスが良くなります。その他、リバランスによるリスク低減の効果・リターンの期待値の変化や他の資産との相関を検証し、リバランスをするかどうかの判断をする事もあります。

バランスファンドを利用した自動リバランス

バランスファンドを利用すれば、自動的なリバランスを行えます。

バランスファンドは、各アセット・クラスの資産を組み入れた投資信託です。バランスファンドのリバランスは、投資信託の運用者によって自動的に行われます。そのため、バランスファンドを保有する投資家は、リバランス売買を行う手間を省く事ができます。

バランスファンドのリバランス機能を利用すれば、個別銘柄売買によるリバランスと比べて売買コストの負担を少なくできます。売買コストの低下は、運用資産の増加と複利効果の享受に繋がります。その一方で、バランスファンド保有には信託報酬の負担がありますので、このコストは投資家の利益を圧迫する1つの要素となります。

節税を意識したリバランス

年末のタイミングに、節税を意識したリバランスを行う事があります。

損益通算を意識したリバランス

損益通算は、節税の基本です。

リバランスで売却したい局面にて、もし含み損のある銘柄を抱えているのであれば、含み益銘柄と併せて売る事を検討します。併せて売れば、損益通算で確定益を小さく抑えられるために、課税額を小さくすることが出来るからです。

ノーセルリバランス

節税を意識したリバランスとして、ノーセルリバランスがあります。

各資産の買い付け金額を調整する事で、売却を伴わずに資産配分のバランスをとる事を、ノーセルリバランスと呼びます。このリバランス手法は、資産形成期の投資家が採用しやすい手法です。

ノーセルリバランスでは、売却益がすぐには発生しないため、売却益に対する課税対象とはなりません。そのため、節税の効果があります。勿論最終的には含み益は、ライフステージにおいて資産を取り崩すタイミングで課税される事になります。とは言え、支払いを先延ばしに出来る分だけ、多くの複利効果を享受できます。

目標とする資産配分の決め方

資産配分の種別

資産配分にはいくつかの種類があります。

基本的な資産配分

コンスタント・ミックス(CM)の資産配分は、一定の配分を保ちます。逆張り型の手法で、多くの長期投資家がこの方針で運用しています。

バイアンドホールド(B&H)は、買ったまま売らずに持ち続けるという配分です。バイアンドホールドは下手な売買を繰り返す場合と比較し、売買手数料を低く抑えられます。そのため、特別な理由が無い限り、買った銘柄を持ち続ける方法は有利だと言われています。

その他の資産配分

他にも資産配分方針は多く知られています。

逆張り型ではタクティカル・アセット・アロケーション(TAA)と呼ばれる、指標を根拠に割高資産を売り、割安資産を買う手法があります。

一方順張り型には、リスクパリティ法と呼ばれる、リスク値を一定に保つ運用や、ダイナミック・アセット・アロケーション(DAA)と呼ばれる、良いパフォーマンスが得られると考えられる金融商品・アセットクラスに機動的に資金を投入していくスタイルがあります。

GPIFの資産配分

バランスを考えるのが面倒臭くなった場合は、国内最大・最強の投資機関であるGPIFのポートフォリオを参考にします。

GPIFは、139兆8,249億円(平成27年度第3四半期末現在 ※1)を運用する巨大な組織で、無難な運用が期待できます。このようにプロの真似をする運用手法は、コピーキャットと呼ばれています。

※1 参照:最新の運用状況ハイライト 2016/5/25確認

現在のGPIFのポートフォリオは、基本ポートフォリオの考え方によれば、国内債券35% 国内株式25% 外国債券15% 外国株式25%という比率が目標として設定されています。

GPIF-Asset-Allocation2016
↑GPIFのアセット・アロケーションです。2016年現在GPIFは、国内資産を60%組み入れており、ホームバイアス(自国資産への偏り)をかけた、コンスタント・ミックス型のアセット・アロケーションを採用しています。

まとめ

資産運用において、資産配分の再調整(バランスを取りなおす)事をリバランスと呼びます。経時変化により崩れた、資産配分のバランスを元に戻す売買がリバランスです。リバランスでは、高くなった資産を売り、安くなった資産を買う事になります。

このリバランス売買は、安値買い・高値売りに繋がり、更にリバランスを行う事で元本確保ができます。そしてこれらの効果の結果として、リバランスは資産の成長性を高めます。

リバランスは、定期的にリバランスを行う方法や、乖離が大きくなった場合にリバランスを行う方法、バランスファンドを利用する方法があります。また、節税を意識した売買を行う事もあります。

目標とする資産配分には、静的なものや動的なものがあります。多くの投資家は、静的なコンスタント・ミックス型のアセット・アロケーションを採用しています。資産比率は、相場観に従い工夫しますが、最大の機関投資家であるGPIFの配分を参考にするのも良さそうです。